7話
***
「おじさん、弱いね。」
二人で七並べをしていた。おじさんは私がカードを留めているので、全然出せずにすぐ負けた。でも、優しい笑顔で私を見た。
「お嬢ちゃんは強いなあ。トランプはよくやるの?」
「お父さんもお母さんも忙しいからやらない。いつも仕事ばっかりだもん。」
おじさんは少し寂しそうな顔をした。
「そっか。でも、お父さんもお母さんも、お嬢ちゃんのことを思って、一生懸命働いているんだと思うよ。」
誘拐犯のおじさんがなんでそんなことを言うんだろう、って思う。そんなお母さんたちを心配させているのは、おじさん達のせいじゃん。でも、色々な遊びをして楽しいから、今は、それは言わない。
「もう一回やろう!」
「え、わかった。今度は勝つからね。」
***
「おい!」
部屋の外から怒鳴るような声がする。誘拐犯の仲間からの食事の相図だ。おじさんはよろよろと立ち上がった。肩のあたりを痛そうにさすっていた。
「痛いな。」
「怪我しているの?おじさん。」
おじさんは私の方を向くと、少し慌てた感じで笑顔を作った。
「ちょっと肩を怪我してしまってね。でも大丈夫だ。」
よろよろと部屋の外へ出ていった。誘拐犯の怖い声がする。おじさんとは違って、外の誘拐犯は声が大きくて怖い。もしかしたら、おじさんはあいつにこき使われて怪我をしたんじゃないか。だったらあいつのほうがずっと悪い奴だ。
おじさんは私の食事を持ってきた。
「食べなさい。」
「おじさんは食べないの?」
「俺は誘拐犯だからね、お嬢ちゃんとは食べないんだよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます