2話

人が少ない脇道は、隣のお祭りのにぎやかさが夢だと思えるほどに暗く静かで、なんだか寂しい。スーツの男性が何か仕事の電話をしていた。お祭りのメインの道ではうるさくて電話できないからここでしているのだろう。何もこんなところまで仕事を持ち込まなくても良いのに。

脇道にも静かにお店を出しているところはあったが、暇を持て余している感じだ。少し離れたところに、明るい出店がある。何かカラフルな粉のようなものを並べている。お祭りにはカラフルでよくわからないものが良く売られているけれど、あれはなんだろうか。なぜか気になる。思わず近寄ってみた。

「『香り屋』?」

出店には、きれいな若い女性が長い髪を垂らしながら、静かに作業をしていた。きれいな粉が店の前に並んで、何とも言えない香りが漂う。幻想的、という表現がぴったりくる。私に気が付くと、お店の女の人はにこりとしてくれた。

「いらっしゃい。」

「何を売っているんですか。」

「香りです。」

女の人は優しい表情を変えないで言う。

「香水、みたいなものですか。それとも、香り袋とかですか。」

「いえ、『香り』そのものを売っています。試してみますか?」

そう言って女の人は私に暗いオレンジ色の液体が入った試験管を渡してくれた。栓を開けると、懐かしい匂いがした。

そのとき、思い出した。わたあめのふわりとした甘さ。大きいカップに赤いイチゴ味のかき氷。スーパーボールをすくうための最中。夢中になって、跳ねた水でズボンが濡れていた。そして、隣を歩くのはまだ若いお母さん。私を見て、優しい笑顔をしている。

「えっ、今のは?」

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