第153話 玉子...焼き...なの?
まさかの変化球を投げて来たマネちゃんと入れ替わる様にアインができたであろう玉子焼きをお皿に載せて歩みよって来た。
<六道>『っ....』
六道がまるでラスボス戦に向かう勇者のような緊張感を持ち出した。
となると、つまりはアインが魔王と言うことになるのだが...まあそれは置いておこう。
<アイン>『はいっ!これは私が作った玉子焼きだよ!』
若干言葉にとげがあるような気がするが...それも置いておこう。
自信に満ち溢れているアインは堂々と六道とゆいにお皿をサーブした。
<ゆ い>『...え、えーっと?』
<六道>『なんだ.....これは』
皿の中身を確認した瞬間に二人は目を白黒させて固まってしまった。
その様子を見た他のメンバーたちも気になってアイン力作の玉子焼きを覗いてみる。
<ク ロ>『え?』
<シ ロ>『なんか私が知らないタイプの玉子焼きがでてきました』
メンバー全員が同じような反応を見せるのも無理はないだろう。
それだけアインの玉子焼きは異質なのだから。
<六道>『...なあ、いくつか聞いてもいいか?』
<アイン>『もち!』
<六道>『これは毒か?』
<アイン>『六ちゃんひどい!』
<しゃちょー>『いやそんな反応になるだろこれは...』
<ゆ い>『じゃ、じゃあボクからも質問良いかな?』
<アイン>『もちろんだよ!ゆいちゃんが聞くなら何でも答えてあげる!』
<ゆ い>『えっとね?.....なんでこれ青いの?』
ゆいの一言でまだ写真を見ていない観客たちがざわつく。
写真を撮るスタッフも驚きのあまりシャッターを切れていなかったのだ。
会場のざわつきが耳に入ったのかスタッフは慌てて写真を撮って会場内のモニターに表示した。
そこに映し出されたものはきっと、人類の誰も知らない玉子焼きだろう。
何故ならばそれは青いのだ。
一旦ここで玉子焼きの外見的な特徴を上げてみよう。
個体差等はあるだろうが、大体の人は『黄色い長方形』の玉子焼きを想像するだろう。
しかし、これは違う。
青くてひし形の物体。これがお皿に載っている物の正体だ。
<六道>『どうやったらこの形になるのか等々聞きたいことは山ほどあるが...まずはこの青の正体を教えてくれ』
六道はこめかみ部分を抑えながら聞いた。
<アイン>『ん?これは食紅だよ~』
<六道>『そ、そうか...なんで食紅を入れたんだ?』
<アイン>『前にさ、味でオリジナリティーを出すのはダメって言われたからね、そして考え付いたのは見た目!だってゲームとかだとスキンとかでオリジナリティーを出すでしょ?それと一緒だね!』
<六道>『玉子焼きにスキンが何種類もあってたまるか....ほかには変なもん入れてないよな?』
<アイン>『もちろん!レシピに掛かれている物以外は入れてないよ!』
<しゃちょー>『食紅入れてる時点でもう違うんだよなー....』
<ゆ い>『じゃ、じゃあ....食べ...る?』
<六道>『ゆい!?』
<ゆ い>『だってアイン先輩が一生懸命時間をかけて作ってくれたものだから、ちゃんと食べてあげたいな~って』
<アイン>『この子前から思ってたけど...ほんとにいい子だなぁ』
ゆいの言葉を聞いてアインは目尻に指を当ててそうつぶやいた。
<六道>『ゆい....ならば俺もついていこう。ただし、俺が先に食べるからな!』
<ゆ い>『わかったよ!』
そうして少しの間沈黙が訪れる。
きっと六道の中で青い玉子焼きと対話を試みているのだろう。
ややあって、六道は意を決して青き玉子焼きを口にした。
少しそれを咀嚼した後に飲み込む。
これ程食事で長いと感じた時はないだろう。
<六道>『...ゆいも食べてみろ』
味に関しては何も触れないでゆいにこの玉子焼きを食べるようにと勧めた。
<ゆ い>『わ、わかった』
ゆいも場の雰囲気に当てられたのか少し固くなりながらその玉子焼きを口に運んだ。
ゆいもしっかり咀嚼した後に飲み込んだ。
<ゆ い>『あ、美味しい』
ゆいがボソリと普通に呟いた言葉に会場は大いにザワついた。
<マネちゃん>『ほ、本当ですか?』
<ゆ い>『うん、ちょっとボクにはしょっぱいけど、普通に美味しいよ?』
マネちゃんの質問に対してハッキリと美味しいとゆいは答えた。
それに会場は震えるほどに驚きで溢れた。
一方、ピピッターでは「恐怖の大王」がトレンド入りを果たしていたことに現地の人間は知る由もないだろう。
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