第152話 玉子焼き....だよ?
<アイン>『よっし!こんなもんでいいかな!』
何やら他のメンバーよりも多く見える卵液を眺めて、自信満々に頷いた。
<ゆ い>『なんかアレ量多くない?』
<六道>『それにアレ色おかしくないか?』
更に不安の色を強くする審査員の二人をよそにアインはようやくコンロに火をつけた。
<六道>『そう言えばマネはどこに行った?』
<ゆ い>『ほんとだ、さっきから姿が見えないね』
少し回りのスタッフに目配せしてみると本当に席を外しているようだ。
しばらく怪しく調理をしているアインを眺めていると元気よく席を外していた人が帰ってきた。
<マネちゃん>『たっだいまもどりました!』
<ゆ い>『あーもうどこに行ってたの?探しちゃったじゃん!』
<マネちゃん>『ごめんね!少し楽屋まで戻ってたの』
<しゃちょー>『勝手な行動をするのはちょっとまずくないか?』
<マネちゃん>『しゃちょーに言われると言葉の重みが違うんですよね...』
<六道>『まあ戻ってきたならさっさと作ってくれ。時間がそろそろ押しているからな』
<マネちゃん>『はーい!』
しゃちょーが説教モードに入りそうなところで間に入る。珍しく味方してくれた事実にマネちゃんは足取り軽く自分のキッチンスペースに戻っていった。
そうしてまた少しの時間が流れた。
審査員と合格をもらったメンバーたちが気を紛らわすように雑談をしていた時、ついにその時が来た。
<マネちゃん>『できました!』
自信満々に黄色の円柱状の物を皿に載せて審査員の二人にサーブした。
<六道>『おお、お前にしてはおいしそうだ』
<マネちゃん>『お前にしてはってどういう意味ですか!?』
<六道>『そのままだ』
そしてまた両者は睨みあって数秒、ゆいが割ってその流れを止める。
<ゆ い>『と、とりあえず食べてみようよ!ね?』
<六道>『...それもそうだな』
二人は出された黄色の円柱状の物を口にする。しっかりと咀嚼した瞬間に二人は驚きの表情を見せた。
<ゆ い>『ね、ねえ...これって』
<六道>『普通にうまいんだが...これは....』
六道が美味しいと言ったのを聞いてご満悦なマネちゃん。
<マネちゃん>『そうでしょう、そうでしょう!』
<ゆ い>『でもこれ...だし巻き卵...だよね?』
ゆいがそう言うと視線が一気に集まった。
<マネちゃん>『なんかこっちの方が凄そうなので、こっちを買ってきました!』
衝撃の爆弾発言である。
<六道>『は?』
<しゃちょー>『まじかぁ』
<ゆ い>『...マネちゃん、結果を発表します』
<マネちゃん>『はい!』
<ゆ い>『メニュー違うし、作ってないから不合格!!』
<マネちゃん>『なんで!?』
<六道>『当たり前だろ!』
後にこの事件は【だし巻き卵事件】、別名では【お料理しないクッキング】として知られる事件になったとか。
そしてこの事件の謎を解明できるものは誰一人といなく、迷宮入りを果たしたそうだ。
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