第133話 さあ大人たち、走るんだ

『もう決まんなそうなので上から順番にやっていきますね~』


<しゃちょー>『最初からそうすればよかっただろ!』


普段まったく運動をしない大人たち(二名)による抗議も虚しく企画が始まった。


◇◇◇


<マネちゃん>『それでは念の為ルールを説明しましょう!』


『なに言ってるんですか?』


<マネちゃん>『へ?私って実況席的な立ち位置なので』


『今回はあなたも走ってもらいます』


<マネちゃん>『うそ~!?』



開場にいる人たちで笑いが起きる中、後方に控える運動しない大人(二名)はガッツポーズをとっている。


それではシャトルランをおさらいしておこう。


 ・20mの距離を電子音に合わせて走る。

 ・段々電子音の速度が上がるので間に合うように頑張って走る。


『実際の物よりもゆるい感じでやるのでよろしくお願いします』


そうこうしている間に準備が整ったらしく、カンペを持つスタッフさんがGOサインを出している。


『準備が整ったようなので、早速始めていきましょう!スタートコールはゆいちゃんよろしく』


<ゆ い>『え!?』


『ほら、私って声ないから』


<ゆ い>『そ、それもそっか...じゃあみんな!いっくよ~!』


開場にいる観客たちはゆいの掛け声に合わせてカウントダウンを始める。


『5!4!3!2!1!』


<ゆ い>『シャトルランスタート!』


ここに集まるほとんどの人たちが懐かしくも聞きたくない電子音がライブ会場に響きわたる。


 そして、3往復もしないうちにもう脱落者が出てきた。


<アイン>『はぁ...はぁ...もう、むりぃ』


なんとかゴールラインまで走りきるが勢いのまま倒れ込んでしまった。


<しゃちょー>『はっ!俺はまだ走ってるぞ〜』


序盤に比べて速度が1/5程度まで落ちたしゃちょーが途切れ途切れの体力の中幼稚な語彙で煽った。


<アイン>『うるせー!ノロマー!』


<しゃちょー>『なにぃ!』


お互いに思考する余力がないため、酷く幼い煽りを繰り返す。


そして思考がままならないしゃちょーはその煽りに乗って速度を上げた。


<ゆ い>『そんなに速く走って大丈夫?』


上がりつつある息でゆいが心配するも、しゃちょーは親指を立てて応えた。


が、1分後に倒れた。


<ゆ い>『あれ大丈夫なの!?』


<ク ロ>『大丈夫だよ、しゃちょーにしてはよく持った方だよ』


そう言われてしゃちょーを見ると、思っていたほど呼吸は荒くなかった。


<ク ロ>『さて、僕も落ちるかな。あとは2人で頑張ってね』


そう言ってクロはコースを離れていった。


<マネちゃん>『とうとう2人になりましたね』


<ゆ い>『あれ?2人って、シロ先輩とラムネ先輩は?』


<マネちゃん>『シロさんとラムネさんならあそこです』


マネちゃんが指さす方に視線を向けるとシロはクロの隣にちょこんと座っており、ラムネはアインの介抱をしていた。


<ゆ い>『いつの間に...』


<マネちゃん>『2人ともしゃちょーと同じ頃に離脱していきましたね』


<ゆ い>『そ、そうなんだ』


<マネちゃん>『さて、例え相手がゆいちゃんでも負けませんよ!』


<ゆ い>『ボクだって!』


併走する2人の間に火花が散る。

心做しか電子音も壮大になっているように感じる2人だった。

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