第114話 息子の家

部屋の案内をすることになったボクは、まず最初に今いるリビングから案内することにした。


三人が来る前にしっかり掃除はしたし、変なものはないし...うん、大丈夫。大丈夫のはず...


「それじゃあまず最初はここ。リビングだよ」


そういって見せると顎に手を軽く当てて、美術館で悪品を見ている人のような感じでボクの部屋を見渡す母さん。


昔から何を考えているかがわからないから少し怖いんだよなぁ...



◇◇◇


私はゆうきに無理を言って部屋を見せてもらうことにした。

どうしてそんなことをしたかって?それは息子がどンな部屋で生活をしているか気になるじゃない。


ゆうきは少し緊張した顔もちで私に部屋を紹介してきた。その仕草から私のことが苦手なのは伝わってくる。...いや、嫌われているのかもしれないわ。


仕方ないもの、私はそれだけのことをしたのだから。


...今はそんなことを考えている場合ではなかったわね。


私は勇気に誘導されるがままに視線を動かした。


この家に入った時から思っていたことではあるが、全体的にセンスがいい。


色合いもきれいにまとまっていて、家具などの木の色で邪魔をしているわけでもない。

モデルルームと言われても納得できてしまうわね。


隣接しているキッチンとかも見せてもらったけど、家電も最新式で私も欲しいくらい。しかも、しっかりと実用的な家電ばかりだ。最近の家電はデザインを追求しすぎて機能面や利便性に欠けてたものがザラにあるけど、そういう見た目だけのものじゃなくて、しっかり考えて買っていることが伺えるわ。


多分だけど、これはゆうきが選んで買ったわけではないと思うわ。それは、まだ一人暮らし仕立ての蒼や、これ系に疎いりんとさんではないわね。


...だれかは分からないけど、ゆうきはとてもいいお友達を持ったということね。


◇◇◇


あれから色々見せてもらったわ。


置いてある家具や物からあの子が充実した生活をしっかり送っていることが分かったわ。


今はあらかた見終わったようで一旦リビングに戻りお茶をのんでいる。


そう言えば、さっき見えてしまったのだけど、ゆうき1人で暮らしている割にはコップが多かったわね...


蒼が頻繁に来ているらしいし、そういうことなのかしら?


「大体見終わったかな?」


家主のゆうきが何故かりんとさんにそう聞いた。


「おいおい、ここはお前の家だぞ?ん〜まあ、大体見終わったんじゃないか?」


少し考えたような声を上げてふわっとした返答を返すりんとさん。まったく、相変わらずね。


それからしばらく、近況報告も兼ねた雑談をしながらお茶を飲んでいた。


すると蒼がコップを下ろす。どうやらなにかを思い出したようだ。


「ねえ、ゆーくん。あの部屋って、見せたっけ?」


「へ?...あー」


どうやらまだ紹介していない部屋があったようなので、持っていたコップを机におく。


「あの部屋はいいかな」


少し間をあけてそう言ったゆうき。


和んだ雰囲気で私は少しカマをかけるように言った。


「あら、見られて困るようなものでもあるのかしら?」


私は焦りながらそれを否定するゆうきの様子を想像していたが、ゆうきはそれとは違う反応を見せた。


「え!?...あー、また後で見せるから...ね?」


少し焦っりつつも後ろめたい感じに返してきたゆうき。


そうさせてしまったことに申し訳ないと思いつつも、私は素っ気なく対応してしまった。


「そう、わかったわ」


場が段々と真面目な雰囲気になって来たので私は姿勢を正す。


もう覚悟は出来ている。


たとえ何を言われても、私はしっかり受け止めあなければいけないから。

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