カルディア④
閣下は私にこう仰った。
「私に万が一のことがあった場合はシオンを安全な所まで逃がしてくれるか」
私が「閣下に万が一などありえません」と応じると「念のためだ」笑っておられた。
そして今、万が一が目の前にある。
閣下だったゾンビが目の前にいる。
「シオン、逃げるよ」
「逃げるっていっても……」
閣下が扉の前に陣取っている。ここから脱出するには閣下をどうにかしなければならない。どうにか無力化しなければ。
「大丈夫。閣下は私が殺すよ」
口ではそう言ったけれど、ナイフを持つ手は震えてしまっていた。
視界が滲んで狙いが定まらなかった。
揺れるナイフを思うように動かせない。
「Aaaaaaaaaaaaaa」
「……っ」
閣下はもう死んでいる。
閣下の自我は、魂は、もうそこにはない。
だから。
だけど。
閣下が飛び掛かってくる。
両手を伸ばして。
大きく口を開いて。
迎撃、しないと。
なのに身体が動かなかった。
「カルディアさん!」
私の身体を押しのけてシオンが閣下の前に躍り出た。
「《
シオンはウィンドカッターで閣下の首筋を深く切り裂いた。
私の代わりに。
返り血を浴びるシオンに私は謝ることしかできなかった。
「シオン、ごめんね……」
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