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 命が助かったと思ったのも束の間、やっぱり僕はここで死ぬ運命だったんだ。


 ドラゴンに遭遇したことでそれは確定。話が通じる相手じゃないし、戦って勝てるわけがない。逃げられるスピードも体力もない。


 まぁ、山の中を彷徨って苦しみながら野垂れ死ぬより、ドラゴンに襲われてサクッと死ねる方が楽か……。


「さぁ、早く僕を殺せ――っ!」


『奇妙なことを言う。おぬしは死を望むのか?』


「っ!?」


 突然、どこからか響いてきた声に僕は目を丸くした。


 低音で落ち着いた声。どことなく知性を感じるような空気があって、温かみも感じられる。


 この声の主はもしかして目の前にいるドラゴンかっ!? でも口は動いていない。かといってほかの誰かが喋っているような感じでもない。


 ――となると、やはり今の声はドラゴンのものなのかな?


 いや、そもそも彼は僕の言葉が理解できるのか? 恐怖や疲れの影響で耳がおかしくなったか、幻聴である可能性も。


『我はおぬしの目の前にいるドラゴンだ。今、おぬしの心に直接呼びかけている』


「っ!? ……あなたは僕の言葉を理解できるのですか?」


『人間の言葉を理解することくらい容易い。ドラゴンの知能をそこらの獣と同等だと思われては困る。むしろ我らは人間以上の知能を持っていると認識しているが?』


 なるほど、信じがたいけどこの事実を目の当たりにしている以上は彼の言葉――と言っていいのか分からないけど、その言葉のような『思念』の内容を信じるしかない。


『それよりも答えよ。おぬしはなぜ死を望んだ?』


「だってあなたはどうせ僕を殺すでしょう?」


『無抵抗の者に危害は加えぬ。もっとも、攻撃してきた者に対しては容赦なく裁きを下すがな。多くの人間は愚かだ。我の姿を見ただけで敵と判断し、攻撃を仕掛けてくる』


「……ッ!」


 危ないところだった。自暴自棄になって下手に抵抗していたら、僕は確実にこのドラゴンに殺されていた。まさに紙一重。どうやら僕は偶然にも正しい選択が出来たらしい。



 …………。



 ……危ないところ? なんでそんなことを思ったんだ? 僕は全てを諦め、死を望んでいたというのに。


 もしかして僕は……本当は……心の奥底ではやっぱり……。


『おぬしは我に攻撃をしてこなかったが、それはなにゆえか?』


「だってそんなの無意味ですから。僕は力も魔法も勇気も知識もありません。何も出来ない人間なんです。戦って勝てるわけがないんです。もともと戦いだって好きじゃないし……」


『ふむ……』


「もし殺されてしまっても、それが僕の運命なんだと思えば諦めもつきます」


『……興味深い。おぬしは普通の人間とはどこか違うようだ。ならば今一度、問おう。もし我が小さな虫だとして、おぬしを襲ったとする。それでも戦わぬのか?」


 襲ってきた相手が小さな虫だったら?


 確かにそれならいくら僕でも負けることはないだろう。一方的に倒すことが出来る。



 その状況で僕はどうするだろうか――



●分からない……→14へ

https://kakuyomu.jp/works/16816700429434671245/episodes/16816700429435123706


●やっぱり戦わない……→30へ

https://kakuyomu.jp/works/16816700429434671245/episodes/16816700429435383440


 

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