第3話かんざし屋の蛇田

今日は授業が早く終わり、岡崎はまた新しい殺し屋に電話した。

「もしもし、かんざし屋の蛇田さん?」

「そうだ」

「あの~、先日、お電話しました岡崎です」

「あぁ~、勉学者の岡崎のあんさんかい。そっちの手はずは整ったのか?」

「いつでも、いいですよ」

「じゃ、今夜。分け前は5両だ!いいな?」

「はい」


岡崎は計算した。だいたい、1両は25万円だから5両で125万円は安い。金庫には金の延べ棒やら、現金がいやんなっちゃうくらい入っているのだ。

この前、飲み過ぎた権田のジジイは、自慢げに金庫の中身を見せてくれたのだ。

これは、早く自分を殺してくれと言っているに違いない。


その日の晩。深夜2時。丑三つ時。

蛇田は、懐からかんざしを出した。

丁寧に磨かれたかんざしの鋭い先端を撫で口に咥えてた。

いざ、出陣!

蛇田はジジイの豪邸に侵入しようと、ブロック塀にまたがると、いきなりだった。

2匹のドーベルマンがけたたましくほえるのだ。

蛇田は驚き、ブロック塀から転落した。

ウギャッ!

それから、豪邸の灯りが付いた。

早く逃げなければ!

しかし、蛇田は微動だにしない。なぜなら、転落した弾みで口に咥えていた、かんざしが蛇田の喉を貫通し、即死していたのだ。


権田のジジイと岡崎は騒ぎに気付き、庭にでた。青年が倒れている。

岡崎はいや~な気配がした。

近付くとかんざしが見えた。

また、失敗だ。

権田のジジイは警察に電話した。


じじいの豪邸には複数の監視カメラがあり、蛇田は賊と見なされ、警察は岡崎との接点がない事を確認した。

何故ならば、我々は公衆電話で連絡を取りあっていたからだ。

蛇田は妙に時代外れで、スマホはおろかガラケーも持っていなかったからだ。

危ない危ない。

でも、失敗は失敗だ。

次はとっておきの殺し屋を探そう。

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