第28話 ユイへの誕生日プレゼント
「それで皆人君はユイちゃんに何あげるつもりだったの?」
「えー、小学生だしぬいぐるみでいんじゃない?」
「わかってないなー皆人君は、あれくらいの年は子供扱いされるの嫌いなんだから、逆にアクセサリーとか大人っぽいのがいいよ」
デパートのエスカレーターを登りながら憧れの静葉と交わされる会話。
皆人は今人生最高の幸福を感じていた。
「(ありがとうユイ、おじいちゃんはこの恋を成就してみせるよ!)」
携帯の着信音が鳴ったのはその時だった。
「あっ、俺のだごめん」
謝りながら慌ててポケットから携帯を取り出す。
こんな時に誰からだとメールボックスを確認してみると武美の携帯から一通のメールが届いていた。
お前の彼女の金剛武美は預かった、返してほしかったら
この事を誰にも教えず、一人で↓の場所へ来い
「(どこのバカだー!)」
俺がいつあの魔王の彼氏になったんだと皆人は心の中で叫び、俺が好きなのは静葉ちゃんだけだと全宇宙に発信したかった。
「どうかしたの?」
憎しみいっぱいの表情をすれば当たり前だが、静葉が顔を覗き込んでくる。
「(し、静葉ちゃんの顔がこんな近くに)ただのイタズラだよ、武美を預かったから返して欲しければ来いだってさ、笑っちゃうよね、あいつを捕まえるとか米軍でも無理だっての」
「でも本当だったらどうするの?」
やや真剣な顔で尋ねて来るが、皆人はデレデレの笑顔で携帯をしまう。
「まっさかー、ささ、武美なんかほっといて買い物買い物ー」
マヌケ面で六階のアクセサリー売り場を目指す皆人。
その様子をサイレントスーツで姿を隠すユイが見守りながら、頭の中で昔の記憶を思い出していた。
「だけど、無敵だと思ってたその女の子も、一度だけピンチの時があってね」
しかし、それが今だとは限らない。
皆人の言う通りあの武美がそう簡単に誰かに捕まるとも思えない。
動くには早いと、ユイはそう判断して沈黙を貫いた。
とある工場の、広いが老朽化の進んだ倉庫、鉄筋や木材のなどの資材類や燃料の入ったドラム缶、フォークリフトといったモノが並ぶ中には三〇人以上の不良達と黒木が居並び、もう一人、丈夫な太いワイヤーで両手両足を縛られた武美が悔しそうに黒木達を睨みつけている。
「さぁって、王子様は来てくれるかねぇ、なぁ武美さんよう」
卑しい声で問う黒木に、武美はサッと目を伏せる。
「皆人は来ないよ」
「彼女のピンチに来ないって随分ひどい彼氏だねぇ、それとも何? お前ら体だけの関係? でなけりゃお前が従わせてるだけとか?」
「……そうだね、そうだよ……皆人は、いつもあたしが嫌がるあいつを振り回しているだけで、あいつ自身はあたしの事なんてなんとも思ってないよ、悪いけど、アテがはずれたね」
らしくない、力無い声に黒木は『ふーん』と興味無さげに口を尖らせると写真を持ってきた子分を呼び付ける。
「な、なんでしょう黒木さ――」
不意打ちだった。
本当に、なんの予備動作も、といよりも予備動作と思えないほど自然で素早く、黒木は近くの木箱に積んであった短い鉄パイプを持つと流れるように子分の頭を殴打した。
鈍い声を上げて冷たいコンクリート製の床に転がり、頭から血を流す子分に、だが黒木は目もくれずすぐに視線を天井に彷徨わせる。
「うーん、じゃあどうすっかなー」
「ならもう犯っちまいましょうぜ!!」
「そうっすよ! 俺らもうマジで股間やべーんすから!!」
彼氏? の皆人の前で輪姦するという予定だった為、子分達はもう武美の爆乳に股間を勃たせて鼻息を荒げる。
この場で犯してしまうのも簡単だが、まずは愛する彼氏の目の前で犯した方が武美も精神的ショックが大きいだろうと思い、黒木は子分たちに手足を持って運ばせ、他の部位には決して触らないよう言ってある。
意識を失っていた武美自身も、雰囲気からまだ自分の体が綺麗である事は察している。
「まーとりあえずもう一回だけメールしとくか、今度は画像付きでな」
そう言って、黒木は武美から奪った携帯電話のレンズを向けた。
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