第27話 店番をサボる暴力ヒロイン
「さーて、店番サボったはいいけど何すっかなー」
言葉通り、母に頼まれた店番をサボって町内を徘徊しながら武美は友人達の顔を思い浮かべる。
「皆人の家は……まだちょーっと恥ずかしいしなー……鈴音の家でゲームでも」
その時、目の前に容姿を説明するのも面倒なほど、いかにも、という不良達が立ちはだかった。
髪は金、茶、赤、ピアスや刺青は当たり前で髪型はスプレーで固めたりドレッドだったり剃り込みが入っていたり。
そこまで見ただけで、武美はもう服装にまで目がいかなかった。
「やいやい武美!」
「今日こそはてめーの息の根をとめてやるぜぇ!」
「なんせ俺らは三〇人!」
「それを五人六列に並び一気に襲い掛かるこの陣形!」
「名付けてスネーク電車道を喰らいやがれー!」
うおおおお、と雑魚キャラまるだしのセリフと叫び声で一気にショルダータックルの姿勢で走り込んでくる。
「うぜ」
なげやりに、いいかげんに振るった右足の一発で前列五人がまとめて左側の塀にめり込みゲームオーバー。
残り五列の連中も、武美が腕を軽く振り回すだけで人形のように飛んで、電線に引っ掛かって黒コゲになったり、塀を乗り越えて他人の敷地へ放りだされたり、ただの一人も武美に触れる事すらできなかった。だが。
「ほいほい、これで最後……?」
最後の一列五人だけが、何故か少し離れている。
五人六列が一団となって襲い掛かる陣形ではなかったのか?
そう思っている間に、その五人は懐から何かを取り出すと、ソレを思い切りアスファルトに叩きつけた。
「何!?」
途端に撒き上がる催涙ガス。
マヌケな五人組は自分達も喰らっているらしく悲鳴とのたうちまわる音が聞こえる。
それでも一人で一個師団並の戦闘力を持つ商店街のオヤジ達を牛耳る武美には効かないが、ただ敵のマヌケぶりに呆気に取られて、僅かな油断ぐらいはしてしまう。
トスッ!
バチンッ!
武美の全身に高圧電流が流れ、意識が刈り取られる。
催涙ガスが晴れた時、背後にはスタンガンを持つ五人の男、そしてその後ろから、麻酔銃を持った黒木がゆっくりと歩み寄る。
「あの黒木さん、これ死んじゃったんじゃ」
「スタンガン五つはやり過ぎですよ」
正論を言う子分達に対して、しかし黒木は言った二人を殴り飛ばして愉快に笑う。
「ははは、ばっかやろう、こいつがこの程度で死ぬわけねぇだろ? それに、死んだら死んだで」
しゃがんで気絶する武美の顔を見下ろす。
「別に困らねーじゃん」
子分達の背筋が凍った。
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