第25話 ロリの前でエロ本を読む男

「うっは、たまんねーな」

「休日とはいえ朝っぱらから祖父が『うっは、たまんねーな』とか言ったら孫はどうすればいいんでしょうね」


 ユイが皆人の読む漫画を覗きこむ。

 

 無修正のセックスシーン


「自重しませんね」


「お前が来たばかりの時は自重してたけどな、よくよく考えてみればお前は俺の童貞を喪失させる為に来たんだしもう自重はしねーぜぇ、エロ本もエロゲーもやりまくるしこれからはユイがいてもオナニ○しちゃうぜ」


「さすがにそれはフルスロットルし過ぎでしょう……ですが随分と薄い漫画、同人誌ですか、いや、確かこれはおじい様のコレクションルームで見ましたよ」


「へぇ、一〇〇年後もまだこれ持ってるんだ」

「はい、確か友達との大切な絆だと、ペンネームがマルセイユ金剛? もしかしてこれは」


「武美の妹舞子ちゃんの作品だ、舞子ちゃんは九歳の時から無修正エロ漫画で荒稼ぎをするつわもので俺の為だけに描いた非売品物をくれるんだよ、大人気エロ漫画家マルセイユ金剛先生の作品で世に出ていないこの世でただ一冊の貴重品だぞ」


 ドヤ顔で見せびらかす皆人にさすがのユイもやや引き気味である。


「小学生が描いたエロ漫画を自慢げに見せられた孫はどうすればいいんでしょうかね、ですがこの漫画……」


 登場キャラの女が皆人そっくりの男に向かって『皆人、もっと、もっときてぇ!』などと言っている。


 内容は皆人が爆乳爆尻のグラマー美女と激しいセックスを繰り広げるという単純なモノなのだが、相手の女性はどう見ても、



『はぁ はぁ 最高だよ武奈(たけな)、腰がトロけそうだ』



「武奈?」

「ああ、舞子ちゃんが書くエロ漫画のヒロインだよ、俺が爆乳好きなの知ってるから『スケベなおにいちゃんがおっぱい大きい人とエッチな事する漫画描いてあげるです』とか言って毎月描いてくれるんだよ」

「いや、そうではなくこのヒロインのデザインが……」


 漫画の中で激しく乱れる女性、その姿は名前もだが、舞子の姉、金剛武美にそっくりで、武美を漫画風にデフォルメしたらこんな感じだろう。


 よくよく見れば、バストやヒップのサイズ、ボディラインどころか乳首にいたるまこの前の一件で見た武美のソレと酷似している。


 言ってしまえば、無修正のアソコも……


「デザインがどうかしたのか?」

「(気づいていない!?)いえ、ただ武美さんに似てるなーっと(瓜二つですよ)」

「まぁ確かにこのおっぱいとお尻は武美と同じだな、舞子ちゃん武美と一緒にお風呂入っているらしいしモデルなんじゃないか?

 武美ってほんと見た目だけは最高だからなー、あれで性格良かったら三秒でプロポーズするのに」


 漫画を読みながらそれなりに真面目な声で言う皆人に、ユイはぼそりと言う。


「武美さんは非常に可愛い方だと思いますが」

「あいつが可愛い? ないない、あいつの性格に一欠片でも可愛げがあったら俺の人生ももう少しハッピーだぜ」


 皆人に裸を見られて赤面しながら悲鳴を上げたり、その後もしばらく涙ぐんで落ち込む武美を思い出しながら、ユイはこの時代に来て何度目かになるか分からないため息を吐いた。


「(この人の鈍さは救いようがありませんね)」

「ああもう武奈ちゃん最高、本当にこんな娘(こ)と思う存分エッチな事がしたいもんですなぁ」

「じゃあ武美さんと」


「だからそうやってすぐ武美を薦めるなって、それにこれはあくまで男としての願望で実際にエッチな事するってのは男女のあれこれと男の責任とかあるだろ?

 そりゃ単純にエッチな事するなら武美が最高かもしれないけど、ちゃんと好き合って、デートして、結婚して、家庭作っていくなら俺はやっぱ静葉ちゃんがいいな」


 真剣な顔で珍しくまっとうな事を言う皆人だが、静葉の本性を知るユイとしてはご愁傷様としか言えない。


「しかしこの漫画、まるで舞子さんがおじい様に姉の武美さんを売りこんでいるようにも思えますが」

「ああ、舞子ちゃんは『おねえちゃんとおにいちゃんにはもっとラブラブして欲しいです』とか言ってるからな」

「やはり」


「この前も言ってけど、舞子ちゃんの夢はそこに自分も混ざって愛人ポジション満喫しながら漫画で荒稼ぎする事だからな、二か月前に貰った漫画にはこの武奈の妹っていう設定の巨乳小学生の女の子が出て来て俺が幼女相姦する内容だったしな」


「完全に洗脳目的ですね、しかしこの漫画を見たらまるで本当におじい様と武美さんが付き合っていると勘違いしそうです」


「実際のカップルをモデルに描かれた作品だとでも? まさか、俺と武美は一生加害者と被害者の関係だぜ」


「まぁ、そうかもしれませんが……(でも知らない人なら…………)」

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