第20話 不良グループ登場

「しっかし今回ばかりはユイに感謝だな」


 午後、ユイと一緒に静葉の家に向かいながら皆人は上機嫌に軽く頭を下げた。


「まぁこれが私の実力なのですよ、ですが問題はここからです。果たして相性診断機で最悪の結果しか出無いお二人をどうやってくっつけ、おやあれは」


 ユイが言葉を切るので前方を見れば、そこには見知った大小の背中が見える。


 この道を、あの二人が並んで歩いているということは、嫌な予感に気を落としながら皆人はその背中に声をかける。


「武美ー、鈴音ー」

「あっ、皆人だ!」

「み、皆人……」


 嬉しそうに駆けよってくる鈴音とは対照的に武美はやや頬を染めて、躊躇いがちに近づいてくる。


「もしかしてお前らも静葉の家に?」

「そうよ、アンタがにゃん子連れて来るから一緒にどうかって」

「こんにちは、鈴音おねえちゃん、武美おねえちゃん」


 ユイの性格変化能力は今日も冴え渡っていた。


「やっほいにゃん子、今日も可愛いわねー、この鈴音お姉様がいっぱい遊んであげるわよ」


 言いながらユイの猫耳カチューシャと尻尾のアクセサリーを撫でまわす鈴音、その小柄な体と童顔ぶりから小学生と間違われる鈴音だが、自分よりロリな人物の登場がよほど嬉しいのか、文字通りユイを猫可愛がる。


「あた、あたしも誘われてさ、そういえばユイとはまだちゃんと遊んだ事なかったし……な」


 この間の一件以来、武美とはおかしな空気が流れている。


 おかげで殴られたり蹴られたりする回数も減ったが、皆人としては避けられているような感じがして違和感がある。


 とはいえ、同級生の男子に二度もハダカを見られては無理からぬ事と言える。


「ねーねー皆人、実は今日は静葉の家でケーキ作ることになってるんだけど、皆人にはアタシの腕を存分に披露してあげるわ」

「え!? ケーキ作り!?」


 思わず武美を見ると、腕前を知っている鈴音も一緒に武美をジト見る。


「な、なんだよ二人して」

「鈴音、フォローは任せた」

「フォローできる自信が無いわ」


 非情なコンビネーションに武美が涙ぐむ。


「うるせーうるせー! あたしだってな! あたしだって練習すりゃケーキの一つや二つ作れるんだぞ!!」

「お前のは料理じゃなくて錬金術だろ」

「むしろ黒魔術ね」

「確かに呪術っぽいな」

「その答えにファイナルアンサー」

「てぇめぇらなぁ~~!!」


 肩を怒らせる武美に、二人は言い過ぎたかと腰が引けるがそこへ、


「見つけたぞ金剛武美!」

「俺らスネークをナメやがって!」

「今日こそてめーのその生意気なツラをぐちゃぐちゃにしてやるぜ!」

「うるさい!!」


 右フック一発で三人のチンピラがぶっ飛び、民家の塀にめり込み気絶。


 スネーク。


 ここら一帯の不良全てを牛耳る最大の不良グループでその危険性は日本の中でもトップクラスなのだが、ナイフを持った男達は機嫌の悪い鬼の拳でアスファルトに沈んだ。


「ったく、静葉の家についたらあたしが本当は料理できるって事見せてやるからな!」


 スネーク達には目もくれず静葉の家に向かう武美。

 彼女にとって武器で襲い掛かる不良も体に止まった蚊と大差ないのだろう。


「なんか武美といると感覚麻痺するよな」

「相手が悪すぎるのよ、相手がね」

「武美おねえちゃんすっごーい♪」



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