第19話 俺のリーサルウエポンがぁあああ!

「奪われたくなかったら根性入れて彼女作ってください、私が全力でバックアップしますから」

「だからそのバックアップがわからねえんだよ、こういう展開って漫画で時々あるけどよ、別にお前魔法が使えるわけでもないし、便利な未来グッズだってレールガンだのデーモンアームだの間違いだらけの相性診断機、お前がやれるのってせいぜいサイレントスーツで俺のデートをサポートしたり相手の身辺情報探るぐらいだろ?」

「ほお、つまりおじい様は私の実力を疑っていると?」

「そりゃ俺を暴力女や高飛車女とくっつけようとする奴を信用しろって言われても無理だろ?」


 何を当たり前のことをと言うと、ユイは目をキラーンと光らせる。


「おじい様、本日の午後は空いていますか?」

「今日は一日ヒマだぞ」

「では携帯電話をお貸しください」

「いいけど何に使うんだ?」


 携帯電話を投げ渡されたユイは答えず、家族を除けば武美、鈴音、静葉の三人分しか登録されていない電話帳から静葉の名を選択した。


 そして皆人の声で。


「ああ静葉ちゃーん? 実はうちのユイが静葉ちゃんと遊びたがってるんだけど午後から遊びに行ってもいいかな?」


 携帯電話から口を離してユイ本来の声で、

「ユイ、静葉おねえちゃんと遊びたいよー」

 皆人の声に戻して、


「だから今電話してるだろ、ちょっと落ち着け、ごめんね静葉ちゃん、うちのユイがわがまま言って、忙しいならいいんだけど」

『ううん、今日の午後なら空いてるわよ、私もユイちゃんとはもっと仲良くしたいと思っていたから、じゃあお昼食べ終わったら来てね』

「ありがとう、やっぱり静葉ちゃんて優しいね、ほらユイ、ちゃんとお礼言って」


 声を戻して、

「静葉おねえちゃんありがとう♪」


『そんな気にしないで、じゃあ待ってるわ』


 ブツっと通話が切れると、ユイは目は無感動のままドヤ顔で携帯を投げ渡す。


「どうですかおじい様? これがユイの実力です」

「す、凄過ぎだろお前!!!?」


 ユイをダシに使い、あくまでユイの為にという大義名分の元に好きな女の子の家へ侵入し、さらに預かっている子供の為に動くという優しい人アピール、ユイへお礼の言葉を促す事で頼れるお兄ちゃんアピールも同時にしてしまうあの手際、だが一番凄いのは……


「今のって未来のボイスチェンジャーか?」

「いえ、私自身の特技です」

「お前は何モノだ!?」

「二十二世紀から来た猫耳少女です、にゃん」


 軽く握った手を折り、猫のポーズのをするユイ、しかし皆人は開いた口が塞がらない。


「なんならこんな事もできますよ」


 静葉の声で、

「私、皆人くんになら何をされてもいいの」


「ぐっは!」


 艶っぽい声音に、皆人が前かがみにうずくまる。


「あっ、皆人くんダメッ、ソコは、見ちゃダメ…………や、やさしくしてね」

「ぬおおおおおおおお!!!」


 たまらず皆人は四つん這いになり、上半身を大きく下げる。


「あんダメ、皆人くんのおっきいのが入って来て、ダメ! 皆人くんの大すぎて裂けちゃう!! そんなにされた私、壊れちゃうよ!!」

「し、静葉ちゃんの口からそんな言葉がぐぁああああああああ!!!」


 皆人の目がみるみる血走り鼻息が荒くなる。


「だめぇ! 太すぎて、長過ぎて、硬過ぎて、熱過ぎて、熱い極太の鉄の杭を打ち込まれてるみたい……だめ、これ以上は、あ、あっ、あああああああああああああ!!!」

「ばっ、バカなぁあああ!! ユイの演技に俺のリーサルウエポンが!! 鎮(しず)まれ!! これはユイの演技、ユイの演技なんだぁあああああああ!!」


「もぉ、だめって言ったのに、皆人くんのばかぁ……皆人くんが寝かせてくれないから私、もぉ皆人くんのオチンチ○無いと生きてけなくなっちゃったじゃない、私をこんなえっちな体にした責任……ちゃんと取ってね」

「スパァーキィーング!!!」


 ユイの前で仁王立ちになって、握り拳を作って天井に叫ぶ皆人、すでにこの童貞神に理性などという高尚なモノは残っていなかった。


「うおおおおおお!! 俺の股間がフジヤマボルケーノだぜえええええええ!!!」


 天井近くまでジャンプして、野獣の動きで襲い掛かる性欲魔人皆人、ソレをユイは本場スペインのマタドール顔負けの動きでかわし、床に顔面ダイブする皆人の背後へまわりトドメの一言。


「皆人くん、今夜も、いっぱい絞り取ってあげるね♪」

「あああああああああ!!」


 一度、大きく皆人の腰が跳ね上がると、時間が止まったように皆人の体は静止する。


 そしてスッと立ち上がり、振り返ったその顔は賢者のように澄みきった表情で悟りを開いた目をしている。


 何も言わず部屋を去ろうとする皆人へユイが一言。


「おじい様……新しいパンツを取りに行くのですか?」


 一度足を止め、やはり皆人は何も言わずに部屋を去った。

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