第17話 ユイの回想3

 それからのユイは遠慮する事無く、愛する祖父を失った可哀相な子供を周囲に見せて、あの日家に来た国の人達の手で行われた葬式に参加し、全ての処理を進めた。


 そしてユイが、皆人と話していたあの国の人の家に引き取られる日。


「愛しているよ、おじいちゃん……じゃあ、いってきます」


 彼の墓の前で最後の別れを告げて、ユイはその場をあとにする。


 この日、国の研究所がたった一人の少女の襲撃に遭い、複数の発明品と共に研究中のタイムマシンを強奪されるという異例の事態が発生する。


 そう、ユイは頭の良い子だったから、皆人と国の人との会話をすぐ理解した。


 ただ、その頭の良さ、しいてはその人間としての優秀さは明らかに異常の域に達していた。


 毎日を皆人と遊ぶ事に費やしていた彼女は、生まれてこのかた努力という事をしたことが無い。


 それでも、彼女はテストで百点以外は取った事が無いし、運動は常にクラスで一番だった。


 小さな町の小さな学校、それも全国的な試験の無い小学校だったため、周囲からはただのお爺ちゃん想いのお利口な女の子としてしか映らなかったため、誰も気付けなかった。


 新人類と言ってよいほどの才覚、このままこの時代に留まり、然るべきステージに立たせれば確実に歴史に名を刻んだ少女。


 この研究所テロ事件最大の損害は壊された機材や施設、まして盗まれた発明品などではなく、日本に数え切れないほどの金メダルとノーベル賞をもたらしたであろう、否、人類の文明を一〇〇年は進ませたであろう稀代の超人、三波ユイを失った事だろう。




 そして彼女は時空を超えて彼と再会する。


「これは夢か? 白昼夢なのか? それとも最近の雷は晴天の中、人様んちの天井ブチ破れるほど進化したのか?」


 若くてハリがあるが、素っ頓狂な声で騒ぐ聞きなれた声に思わず頬をほころぶ。


 だがこれから会う彼は自分を知らないのだ。


 その事を自分に良く言い聞かせて、ユイは彼をプロデュースするに相応しい、違う自分を作ってからタイムマシンのハッチを開いた。


「突然出て来てこんにちは、ここは三波家であなたは皆人でよろしいですか?」


 こうして、三波ユイの第二の人生が始まった。

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