第13話 全裸開脚をさらした暴力ヒロイン!
「あーもうっ!!」
試着した下着を脱ぎ去り、武美は畳の上に大の字になって天井を見上げた。
「あたしゃ何やってんだ、皆人の奴は静葉のことが好きなんだ、いくらあたしがアピールしたって……」
自分を見てはくれないだろう、そんな不安が隙間風のように胸を吹き抜ける。
恋は盲目、そんな事は武美自身が一番よくわかっている。
恋をすると人は周りが見えなくなる。
恋した人がこの世で一番の存在と思い揺らぐ事が無く、他に魅力的な人がいても気にならない。
武美はテレビのアイドルに興味が無い。
気に入っている歌手ぐらいはいるが、他の女子のように熱狂する事はない。
昔から、同年代の女子達が美形の男子やテレビのアイドルに黄色い声を上げ、誰々と付き合えたら死んでもいいとか叫んでいたが、武美はそういう話を聞くたびに『皆人のほうがいいもん』と心の中でつっぱねてきた。
恋とはそういうものなのだ。
だからきっと、自分がセクシーな服で皆人にアピールしても、男の皆人は一時的に興奮して、自分に釘付けになるかもしれない。
だが、それはあくまで性欲からくる衝動的なモノであって、心の底から恋愛感情が湧きだして、自分を愛してくれるわけではないだろう。
事実、去年みんなで海に行った時、皆人は武美のビキニ姿に鼻血を出したが、結局は一日中、静葉にデレデレだった。
つまりは、恋とは対象に既に意中の相手がいる時点でアウトなのだ。
それこそ静葉に男でもできない限り無理だろうが、静葉に男の噂が上ったことなんて一度も無いし、静葉と話している限り、彼女が男に興味がある様子すらない。
皆人の目が静葉から離れるのは一体いつのことになるのやら。
「皆人ぉ、さびしいよう」
好きな人が自分を見てくれない寂しさに、彼女らしからぬ言葉が漏れてしまう。
「おい武美、お前グローブ忘れ……て…………」
「へ?」
世界の時が止まる。
状況を確認する。
武美はセクシーランジェリーの中で全裸大の字仰向け姿勢で、武美が首を起こした視線の先に皆人が立っている。
二人は動かない。
「 」
「 」
二人の思考が回り始める。
「………………………………………………………………………………………………」
「………………………………………………………………………………………………」
二人の顔が首元から一気に赤くなる。
「「あんぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」」
「ノォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ズドバシコーン!!
飛び起きた反動を利用し皆人の腹に拳を一発。
「見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るなぁあああああああ!!!」
顔面を殴り、殴り、殴り、百裂パンチを全弾顔面にブチ込み、続けて昇龍拳で天井までぶっ飛ばし、皆人が落下できないほどの連続蹴りからのハイキック四発、そしてカカト落としで畳に打ち込んでからマウントポジションを取る。
後はもう、どんな表現方法を用いても表記不能なありさまだ。
ギッタギタのメッタメタに打ちのめされ、ズタズタボロボロのボロ雑巾のようになるまでフルボッコにした挙句、僅かに痙攣するのを確認すると、トドメとばかりに立ち上がり。
「死ねぇえええええええええええええええ!!!!」
ゴールをキメるサッカー選手バリのフォームで皆人の股間を蹴り潰し、グチャっという効果音とともに皆人の体は壁に叩きつけられてから畳に落ちて、もう痙攣もできず血の海に沈んだ。
しかしそれは武美も同じだ。
「うわぁーん見られたー!! み、皆人に全部、あたしの全部、全部! しかも下着まで、死にたいー!」
両手で局部を抑え、エロランジェリーの散乱する畳にうずくまって泣きじゃくる地上最強の生物がそこにはいた。
武美の中で大切なナニかがガラガラと音を立てて崩れ去る。
今でこそ皆人は気を失っているが、目覚めた皆人の記憶が残っていたらどんな顔をすればいいのか分からないし、仮に皆人が記憶を失っていても武美自身が全てを見られたという記憶がある以上、どのみちマトモに接することなんてできない。
「終わった……あたしの初恋…………」
畳に突っ伏して武美のライフもゼロになる。
そうして涙の川が広がる背後で、ユイは皆人のズボンとパンツを下ろして冷静に皆人のリーサルウエポンを検分。
「(よし、これならギリ修復可能、ならあとは)」
皆人の服装を正して、ユイは天使のような微笑みで武美の肩に手を触れる。
「よかったねおねえちゃん、これでおにいちゃんの中におねえちゃんのことが刷り込まれたよ」
「こんな刷り込まれ方は嫌だ! 終わりだ! これであたしの恋は終わったんだ!!」
「違うよ、始まったんだよ」
にぱー、っと笑うユイに武美は『え?』と首を傾げ、ユイの恋愛講座が始まった。
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