第8話 ルックスだけは最強
「おーし、来たな皆人!」
チノパンにTシャツ姿の皆人とは違い、白い野球ユニフォームをキッチリ着こなした武美が嬉しそうにバットを振り回す。
今どき高校生が休日に河川敷で野球の練習とはこれいかに、そしてユイはサイレントスーツですぐ近くについてきている。
「じゃあさっそく練習すんぞ、まずはここらへんを五周だ」
「お、おう」
家であんな話をしたばかりだからだろう。
皆人の目は自分より背が高い武美の体にいってしまう。
タイトな野球のユニフォームを大きく押し上げるバストとヒップ、キュッと引き締まり、大きくくびれたウエスト、一七歳でこれは反則だろう。
それに、ただでさえ脚の長いモデル体型なのに視線を上げれば、顔は形の良いまゆ毛と長いまつげに飾られた大きな目と筋の通った鼻、男子が一〇〇人いれば一〇〇全員が美人と太鼓判を押すだろう。
「(まあ、ルックスは最強なんだけどな)」
その辺は皆人も認めていた。
雑誌を読んでも武美以上に綺麗な足のモデルなんていないし、エロDVDを見ても武美ほどセクシーな体のAV女優なんてほとんどいないし、テレビを見ても武美以上の美人も少ない。
確かに女優さんや、ミスコンの人のほうが武美よりは美人かもしれない、だが武美の持つ、一〇代の少女特有の若さが残る顔立ち、パット見は美人だが、嬉しそうに笑った時など、表情や見方によっては可愛いと思える、そんな稀有な顔立ちは奇跡だと皆人は確信している。
もっとも、それほど恵まれた容姿でも性格が破綻してはユイにいくら薦められたところで付き合おうとは思えない。
などと考えている間に、何故か武美は自分と皆人の胴体をロープで繋いでいる。
「武美、これなんだ?」
「ん? だから言っただろ? ここらへんを五周って、走るんだよ」
「おいそれまさか」
気づいた時にはもう遅い、武美の全力ダッシュに全身を持って行かれ、皆人は河川敷の大地に全身を削るように引きずられ、草むらでは服に草のツユが染み込み、石に頭をぶつけ、雪だるま式にダメージが蓄積していく。
市中引きずり回しの刑を執行中、武美は皆人と一緒に走っていることに満面の笑みで一人、悦に入る。
もはや見た目アンデットの皆人を冷ややかに眺めながらユイはため息をついた。
金剛武美、夢中で遊んでいる間にお人形をズタボロにしてしまうタイプである。
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