第7話 トップバスト100センチHカップ
不安げに尋ねる皆人にユイは人差し指を立てて、ズバリ説明をする。
「おじい様はワールドオナニ○グランプリにおいてイクまでのタイム、二四時間以内にイク回数、ボ○キ保持タイムなどの全種目ブッチ切り一位の常連で、二四時間以内記録の七七回にはさすがの私も開いた口が塞がりませんでしたよ」
「うぅ、自分の未来を聞けば聞くほど惨めになっていく、きっと未来の俺は友達やご近所のみんなからバカにされてるんだ」
「いえ、友達は一人もいません」
「ひでぶっ!」
「そして近所中からバカにされてませんよ、だってそもそも無視されてますから」
「あべしっ!」
吐血しながら痙攣する皆人、もう彼のライフはゼロだった。
「そこまで嫌がらなくてもいいじゃないですか、武美さんはトップバスト一〇〇センチのHカップ、一メートルですよ一メートル、スリーサイズをメートルで表現するとかどういうおっぱいですか、昨日家に忍びこんで色々調べましたが色も形も最高でおっぱいマニアのおじい様にはぴったりじゃないですか」
「お前はどこを調べてんだよ! それに俺はそんなおっぱいに興味なんてないさ! 俺が愛する静葉ちゃんだってDカップでそこまで大きい訳じゃないしな」
突然大人ぶった顔になる皆人。
「ふっ、未来の俺はどうか知らないけど俺はそういうのに興味な――」
「えーっと『おっぱい特選』『超乳世界』『どっぷり爆乳ボディ』『巨乳専門誌バスティ』」
「のぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ~~~~!!!!」
危機迫る勢いで襲い掛かる皆人の猛攻をかいくぐり読み漁るユイ、その体捌きはきっと戦場でマシンガン相手にも通じるだろう。
「やれやれエロ本の種類の隠し場所も一〇〇年間変わりませんねー」
「ぬあぁああああああああああああああああああああッッ~~~~!!!!!」
「巨乳モノの写真集に雑誌に漫画にゲームにDVDの中でライトなモノをベッドや机の下に隠し、ハードなモノは引き出しの二重底や書店の紙のカバーで表紙を分からなくして教科書と一緒に堂々と置く、その年で既にこれほどの技術を持っているのは驚嘆に値しますが、その全てが巨乳モノとはどれほど偏った趣味ですか、偏食は体に悪いですよ」
ユイが床に置いたエロモノから順に回収し必死にまた同じ場所に隠す皆人、その背中は日本中の男子から同情され、女子からは軽蔑されるだろう。
「くそー、俺の完璧な隠ぺい工作が何故だぁー!」
「そりゃ未来では私がエロ本管理などをしていましたから」
「へ?」
「未来では私がおじい様のエロ本エロDVDを作者や女優さん別に整理したり風邪などで読めない時は私がページをめくったりマウスを操作してエロゲーを進めたりしてたので、おじい様の性的趣味は全て把握済みでして、おじい様、何故泣いているのですか?」
当たり前のように淡々と説明するユイに、皆人のまぬけな顔は三秒で涙にぬれていた。
「うぅ、未来の話とはいえこんな小さい女の子に俺はなんて事を……」
「まあ私は一一歳なので一八禁はNGですが気にしないでください、私がおじい様に拾われた六歳の時からずっとですから、私からすればエログッズは日用品です」
「やめて! 俺のハートを抉らないで! これ以上自分の醜聞を聞ける自信がない!!」
「この時代のおじい様は若いですねぇ、私の知るおじい様は悩める小学生に無修正の裏モノ写真集をさりげなく渡してPTAとに真っ向から戦うというのに」
「いい加減にしろ未来の俺ぇええええええええええええ!!!」
叫んで皆人は隠したエロ本を今一度取り出す。
「ええい! こんなものがあるから俺の頭は桃色パラダイスから抜け出せないんだ!
こんなもの! こんなもの!」
捨てないで
ゴミ箱へ振り返り、そこで足が止まる。
「な、なんだ今のは!!?」
周囲を見渡すがユイ以外には誰もいない、だが皆人の耳にはしっかりと聞こえる。
私達を捨てないでご主人さま
「こ、この声は!?」
それはエロ本達の声(と言う名の皆人の幻聴)だった。
世界一の巨乳好きにして人類史上最強のエロ神たる皆人がエロ本を愛でる気持ちは魂を成してエロ本に宿り、ただの紙とインクに命を吹き込んだのだ。(という皆人の願望)
「ぐっ、しかし俺は……」
皆人の中に、エロ本達とのかけがえの無い思い出が走馬灯のように蘇る。
どれを買うべきが数十分悩んだあの日、オヤジ臭い風体に変装し一八歳以上に見せかけてレジに並んだ時の緊張感。
袋とじを開ける時、一ミクロンのズレも無いよう全神経と魂をカッターに込めた時の、あの宇宙と一体化するような未知の感覚、カッタ―の刃を一スライドするごとに全身を突き抜けた鋭利な冷たさ。
そしてついに袋とじが開いた時、皆人はそこに世界の真理を見た。
いつ母親が部屋に突入してくるか分からない恐怖と戦い、耳を部屋の前の廊下へ集中させたまま意識だけはエロスへ送り込み、全ての苦行と困難を乗り越えた先にあるあの瞬間、皆人は神の園へとの導かれそこで仙人になった。
「ぐっ、だが! だが俺は未来でいたいけに幼女に!!」
脂汗を流し、皆人は涙を流す。
すると、目の前の空間が光に包まれ、その中から人影が見える。
「あ、あなたは……」
その姿に皆人は目を見開いた。
「じいちゃん!」
じいちゃんの魂(まだ生きてる)を前に皆人は立ちつくす。
「じいちゃん、どうして……」
「よいか皆人、わしの時代は酷かった」
「え…………」
「エロサイトやエロDVDましてエロゲーなぞ無かったわしの時代は全て現地調達、わしは村の中だけでなく、西へ東へと走り、更衣室を、脱衣所を、婦警を狙い警察署に忍び込んだ事すらあったもんじゃ」
「じ、じいちゃん」
「皆人よ、戦時中わしがアメリカ本土へ単身乗り込んだ時の事を話した事があったな?」
突然の話に皆人は言葉に詰まる。
「え、う、うん、でもあれは嘘自慢話しで――」
「本当じゃよ」
「…………!」
重い声音が語る。
「わしは戦場で米兵と戦ううちに知ってしまったんじゃ、そう」
じいちゃんの目が遠い日を眺める。
「敵女兵達の乳のデカさにな……」
「あ!」
じいちゃんの目が解き放たれる。
「そうじゃ! わしは国の為では無く、敵国のおっぱい事情視察の為にアメリカ本土へ渡ったのじゃ!」
驚きのあまり声も出無い皆人にじいちゃんは続ける。
「さらにわしが戦場で現地の村を助けるために敵一個中隊を殲滅した事も覚えておるか?」
「まさかあれも!?」
「そうじゃ! あの村にはな、ええ乳の娘がおった! ブラなど無く、布一枚だけを捲いた乳が揺れ、弾け、震え、わしは思った! 必ず守ろうと! この命に、いや、魂に変えてもな!!」
「じ、じいちゃん!!」
「皆人! 貴様がその手に持っているのはなんじゃ!? おっぱいじゃないのか!? それを貴様はどうしようとした!? 言うてみい!!」
「グハ!」
「それは貴様が命をかけて守るべき聖書! それを捨てて貴様はどのツラ下げてこの先エロ本達と会話する気じゃ!!?」
「ぐぅ! お、俺は……俺は…………」
エロ本を落とし、床に崩れ落ちる皆人、その肩にじいちゃんが優しく手を置く。
「皆人よ、わしらの時代はエロスが無かった。だがお前らの時代は違う、飽食の時代に生まれたのモノにはその責務がある。
皆人よ、この時代を楽しめ、決してエロスを粗末にするな、お主なら分かるじゃろう?」
「じ、じいちゃん! じいちゃーん!」
じいちゃんの影が虚空へ雲散霧消していく中、皆人は一人涙を流してその影に手を伸ばし、そして悟りを開いた。
「分かったよじいちゃん、俺、もう二度とこの娘(こ)達を手放さないよ」
「さっきから何をしているのですか?」
冷静なツッコミに皆人は無言でエロ本をしまう。
ユイからすれば、突然皆人がエロ本をつかんだかと思えば急に止まり、驚き、叫び、崩れ、涙を流したのだ。
理解できるほうがおかしい。
「いや、なんでもないんだ、ちょっとじいちゃん(田舎で年金生活中)の魂とリンクしてた」
結局理解できず首を傾げるユイだが、思い出したように口を切る。
「そういえば土曜日の今日は確か武美さんと野球の練習ではありませんでしたか?」
「え? ああそういえばそんな事言ってたっけ? うっわ超行きたくねー、そもそもリーマンの息子の俺がどうして商店街の草野球チームで野球してんだよわけわかんねーよ、まあ実際は武美のせいなんだけどよ」
ぐちぐち文句を言いながら、押入れからバットとグローブを取り出す皆人。
「そうですよおじい様、武美さんはおじい様に会いたいが為に野球に誘っているのですからおじい様も」
「そうそう、武美の奴が俺をイジめるためにいっつもいっつも野球に誘ってくるんだよ、ほんと、幼稚園の時からどこに行くんでも引っ張り回されたり小学校の時はマズイ手作りのお菓子を食わされたり、どうしてあいつは俺をあそこまで目の仇にするのかね、って、どうしたユイ? 肩が震えているぞ」
「いえ、おじい様のニブさには脱帽モノです」
「?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます