第3話 商店街メンバーが全員世紀末クオリティ
「よし! それではこれより我が白玉商店街と宿敵黒玉商店街との戦争を始める! 準備はできてるか野郎共!!」
『サーイェッサー!!』
放課後、武美はいつもの河川敷で野球のユニフォーム姿でバットを地面に突き立て、商店街のおっちゃん達に檄を入れる。
しかしその面子は……
肉屋のオヤジ鬼瓦(おにがわら)剛気(ごうき):ものごころついた時から生きた闘牛を素手で解体。
八百屋のオヤジ地獄谷(じごくだに)虎丸(とらまる):ドリアンを片手で握り潰す。ミキサーは弱者達で共有しろ。
魚屋のオヤジ鯨波(くじらなみ)堂刹(どうせつ):魚は現地調達、サメや鯨も右腕一本あれば必殺上等。
金物屋のオヤジ剣之(つるぎの)死龍(しりゅう):刃物を使うのはハンデ、素手の威力は日本刀以上。
米屋のオヤジ大豪堂慶(だいごうどう)羅(けいら):元関東暴走族連合初代総長、関東のワルは全員舎弟。
酒屋のオヤジ轟山(とどろきやま)厳鉄(がんてつ):喧嘩百段、機動隊一〇〇人を五分で壊滅。
不動産屋の娘緑川(みどりかわ)鈴音(すずね):言葉より先に帝王学を学んだナチュラル・ボーン・プリンセス。
未来の童貞神三波(みなみ)皆人(みなと):オカズにしたヒロインの数は二万人、右手の器用さに定評あり。
雑貨屋の娘金剛(こんごう)武美(たけみ):地上最強の生物オーガ、第三次世界大戦を終わらせる女。
明らかにメンバーがおかしい。
そして皆人が浮いている。
だが彼らが白玉商店街に生きる義理と人情の益荒男達という名の店主達である。
野球の試合なのに皆人はいつも警察を呼びたくなる。
というか自衛隊に来て欲しい。
そもそもこんな世紀末を牛耳れそうな連中しかいない白玉商店街が狂っている気がした。
白玉商店街における犯罪成功率が〇パーセントなのもうなずける。
だが、
「野郎共! 貴様らの目的はなんだ!!?」
『殺せ! 潰せ!』
「この戦いが終わった後に立つのは誰だ!? 大地を染める血は誰の血だ!!?」
『厳砲(がんほう)!! 厳砲!! 厳砲!!』
敵側も身長二メートル超えの筋肉魔人達が叫んでいる。
顔の向こう傷や腕の銃創は基本装備で全員が人殺しの目をしていた。
そして音頭を取っていたリーダー格の男がこちらに歩みより、
「グフフフフ、金剛の娘、よくぞ逃げださずに来たな、今日こそは貴様らの肉を鴉(からす)に喰わせてやろうぞ」
右目に眼帯をしたスキンヘッドの男が武美を見下ろし下卑た声で笑う。
しかし武美は抜き身の刀のような視線でメンチを斬り返す。
「鴉? 天業院(てんごういん)邪髑(じゃどく)、そりゃてめぇのペットショップで使ってるエサかい?」
挑発的な言葉に邪髑の眉間に深いシワが刻まれる。
「なに!? うちのペットショップで使っている餌は信頼できる業者から仕入れたモノを吾輩がじきじきにブレンドした特別性で――」
「犬猫ばっか相手にしてる女日照りの短小包茎野郎の戯言は聞こえませんなー、、てめぇのチンポが小さすぎて人間に相手してもらえないからって商品傷モノにするなよペットレイパー邪髑さん?」
相手を見下した武美の暴言に邪髑は怒髪を突いて声を張り上げる。
「ええい口の減らないメス犬め! その生意気な顔が削れるまで地面をナメさせてやるから覚悟しろ!!」
そう言い捨てて、邪髑は自分のチームの元へ戻って行く。
帰りたい。
皆人の中にはそれしかなかった。
「そんな暗い顔しないでがんばってね、おにいちゃん♪」
サイレントスーツを解除して応援してくれるユイの存在に武美達の視線が一斉に向く。
「あら、この子だれ?」
「見ない顔ね」
「って、おい皆人、確かそいつ朝いたよな?」
「えーっとこいつは」
「こんにちは、皆人おにいちゃんの親戚の三波ユイです♪」
尻尾の飾りを揺らして、猫耳カチューシャをつけた少女が笑うと静葉が優しく頭を撫でる。
「可愛い、そのカチューシャと尻尾は皆人君からもらったの?」
「うん、お兄ちゃんがくれたの、ユイ猫ちゃん大好きなの♪」
「でも浴衣にサンダルって、夏はもう少し先よ」
「気の早いガキだな」
三者三様の反応だが、三人ともユイには好意的で、頭を撫でて可愛がる。
「っと、そういえばもう試合が始まるな、おう皆人、こんな可愛い応援団がいるんだからユイちゃんにいいとこみせてやれよ」
「いやユイに応援されても」
「頑張ってね皆人君」
「うん静葉ちゃん俺がんばるぅ!」
武美と鈴音の眉間にシワが寄る。
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