第6話:集合

 



 柚子胡椒の右肩に座らされていたのを移動し肩車状態になり、後ろから両耳をがっしりと掴む。

 ホワホワしてちょっと気持ち良い。

「ごめ、やめ、悪っ、俺が悪かったって」

 痛いのか、くすぐったいのか、柚子胡椒が俺の手を掴もうとして失敗する。柚子胡椒の手はデカいので、俺の腕を掴むのが難しいようだ。

 あ~気持ち良いな~。この世界、虎もいるのかな~。虎テイムしたいな~。


「おい、柚子胡椒。この世界でも誘拐は犯罪だぞ」

「これから友人と会おうという時に、子供を拐うとは……付き合い方を考えないといけませんね」

 振り返ると、黒いのと白いのが並んでいた。

 しかも顔がそっくり。

 これは、悪友4と5の双子で間違いないだろう。


 とりあえず、無言で見下ろす。

 柚子胡椒の肩の上なので、俺の方が遥かに高い位置に顔があるからな。

 二人の表情が面白いくらいに変わる。

 揶揄うような笑いから、無表情。そして、驚愕から焦りへ。

 それでも俺は無言で見下ろす。

「「申し訳ありませんでした~!!」」

 90度に腰を曲げて謝られた。

 この変人双子は、俺に軽蔑されるのが何より辛いらしい。


「可愛くなるとは予想していたが、まさか本当の子供に見えるほどとは思わないだろう?普通は」

 黒い方が言う。魔族の吸血鬼で、名前は『ジルド』。職業は暗殺者。

「しかも年齢設定いじってないって言うから驚きですよね。ヴィンが凄いのか、ハーフリングの種族補正がそうなのか、どちらなのでしょうね」

 白い方も言う。魔族の銀狼で、名前は『レイ』。職業は暗黒騎士。

 兄弟揃って怖いな、おい。しかも名前……絶対、快楽殺人者の「ジル・ド・レイ」だろ。



「あれ?早いね~キャラメイク途中で飽きた?」

 俺に笑顔を向けてくる爽やかな妖精。

 こいつ、悪友その2だな。

 キャラメイクは、全種族を試してみるのが通常らしい。

 俺は魔族とかダーク系まで辿り着けなかったよ。うん。飽きたっていうか、疲れた。

 レイの膝の上にいた俺を抱き上げ、頬擦りしてくる妖精。

 酔った親戚のおじさんかよ!!


「予想以上に可愛くってお兄さんは嬉しいよ~」

 四人で座って話していると、通りすがりの人がチラチラと見て来る。

 俺は妖精…エルフの『オーベ』の膝の上なので人数に入れていない。

 オーベはアーチャーで回復術師だから他の三人に比べると華奢だが、180センチ近くある。

 全員、種族の最高身長にしてるっぽいからデカイんだよな。

 一応俺もだけどね!


 悔しいけど、こいつら全員現実リアルでもイケメンでモテたからな。

 そりゃ目立つわ。



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