第5話:待ち合わせ

 



 無事とは言い難いが冒険者登録を済ませ、チュートリアルが終了した。

 受付嬢に平謝りされたが、そもそもカウンターに座らせた脳筋冒険者がいけないのだと思うぞ。

 確認したが、やはり俺以外にも普通にハーフリングはいるらしい。

 ただ、俺みたいに『子供』なのは、本当の子供以外にはいないらしい。

 やはり問題はこの童顔か……。



「あ~、ここで友人と待ち合わせているから、もう大丈夫だ」

 冒険者ギルド前の広場の噴水前。

 俺は脳筋冒険者のにいる。

 誤解は解けたはずなのだが……。

「こんな所に子供一人で置いてったら、すぐに誘拐されちまう」

 だから、子供じゃないっつうの!

「登録時に俺の年齢確認しただろうが」

 実年齢のまま26歳だ。

「その年齢の見た目なら、俺も心配しないんだがなぁ」

 何だと、この野郎。俺が童顔だから悪いのか?そうなのか?


「あれ?ギルマス、何してんの?子守?」

 脳筋冒険者の知り合いらしき獣人が声を掛けてくる……ってか、今、ギルマスって言ったか!?

「誰が子供だ」

 思わず声を掛けて来た獣人を睨むと……


 思いっきり吹き出された。


「おまっ、ちょ、ハーフリング勧めたのは俺らだけど…… 」

 腹を抱えて爆笑しているコイツは、おそらく待ち合わせ相手の一人だろう。

「誰だよ、もしかしてー」

 名前を呼ぼうとして、での名前を知らない事に気が付いた。

柚子ゆず胡椒こしょうと呼んでくれ!」

 サムズアップされた。

 好物を聞かれて「柚子胡椒」と答えるくらい好きなのは知ってるが、まさかの名前かよ。



「待ち合わせ相手で間違いないのか?」

 ギルマスに問われたので頷く。

 ギルマスって、ギルドマスターの事だよな?ギルマスって名前だなんてオチはないよな?

 なんて考えてたら、ヒョイっと肩から持ち上げられた。

 地面に降ろされるかと思いきや、柚子胡椒に渡される。

 今度は柚子胡椒の肩に座らされた。

 二人とも2メートル位の巨体だから、俺など軽々なのだろう。

 納得はいかないけどな!


 ギルマスと別れてから、改めて挨拶。

「獣人白虎で拳闘士だぜ!」

 ニカッと笑ったら、立派な犬歯があった。犬歯ってか、牙?

「皆が言うから、俺はテイマーにしたぞ。名前は『ヴィン』にした」

「ヴィン、よろしくな」

 頭をガシガシと撫でられる。

 そういえば、現実リアルでも身長が伸びる前はよく頭撫でられていたな。

「で、何歳設定なんだ?」

 …………。

 フカフカの耳を思いっきり引っ張ってやりました。



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