第7話:予想の斜め上

 



 悪友その1を待つ間、ウィンドウ?パネル?とにかくステータスの見方や使い方を教わった。

 五人でクランを立ち上げているらしく、招待されたのでOKした。

 人数は俺を入れて六人って、単なる仲良しグループだろう?笑える。

 あと、バトル時のパーティーにも入れて貰った。


 そしてステータスに常に現実時間リアルタイムを表示する設定にしてもらった。

 どうやら俺はキャラメイクに全然時間をかけていなかったようで、待ち合わせの大分前にここに来ていたようだ。

 それを見越して早く来た柚子胡椒good job!



「あ、そうだ。驚いて本名を叫んだりしないように先に教えとくね~。今からくるのは『咲樹サキ』だからね~」

 オーベが悪戯っぽく笑う。

 コイツがこういう顔をする時は、大概ろくでもない事が起こる。

 とても嫌な予感がする。



 何となく、広場がざわついている気がする。

 浮き足立っているとでもいうのか、こう、ソワソワしてる?


「相変わらずスゲェな、女王様は」

 柚子胡椒が笑いながら言う。

「変なのを引き連れていたら、近付かせませんけど良いですよね?」

 レイが遠くを見つめながら確認するように呟く。

「私もレイに賛成だ。今日はヴィンがいるからな」

 ジルドの視線も遥か彼方。


 何かが近付いて来る。

 ギャラリーを引き連れたゴルファーのようだ。いや、野次馬を引き連れた芸能人の撮影?

 とにかく、何か変な集団。


「ヤベ。何かキモいから移動しちゃダメか?」

 俺らのまとめ役的なオーベを見上げる。

 咲樹には悪いが、あの集団が来るなら移動したい。

「ん~俺的には有りだけど、咲樹がマジ泣きするから止めたげて?」

 オーベがウィンドウを開いて何か操作する。

 段々と近付いて来ていた異様な集団が止まった。固まった?

 そこから一人だけ、こちらに向かって歩いて来る人がいた。


 腰まである緩いウェーブの掛かった淡い黄緑色の髪。スラリと伸びた手足。均整の取れた体躯。

 近付くほどにハッキリしてくる美貌。

 女神だと言われても納得しそうな妖精だ。


 そんな妖精が俺と目が合うとぱぁっと表情を輝かせて駆け出す。

 走って来た勢いのまま俺を抱き上げ、ギュウッと抱き締めてクルクルと回る。

「何これ、可愛い!予想以上に可愛い~」

 頬に頬擦りされる。

 こ、こいつは……

「(サ)サキ?」

 本名を言いそうになり、心の中で唱えるだけにとどめる。

 現実リアルでも1番俺を構ってくる、ほんの2時間ほど前に会ったばかりのイケメン……


 って、何でお前、ネカマなんだよ!!



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