第27話 あんた妹いたの!?
「来たんだぜヤマト、今から丸太でこのドアぶち破るからドアに近づいたらだめなんだぜ」「俺がいつ籠城(ろうじょう)したんだよ!?」
玄関まで走ってドアを開けると、さすがに丸太はなかったがドアから離れてショルダータックルの準備をするヒデオ、そしてアリスと風呂敷包みを持つイヨリが立っていた。
「ふー、やっぱ家の中は涼しいわね」
「また今日は日差しが強いからね」
本日もたゆんたゆんの胸で俺を惑わすイヨリの格好は白いミニスカートにピンクのキャミソール、白くみずみずしいフトモモから可愛らしい足先まで全部見えるように、足にはビーチサンダルを履いて涼やかな夏の女の子らしさが出ている。
「でかしたぞアリス」
気がついた時にはアリスに親指を立てていた。
「アンタの好みも大体解ってきたしね、イヨリのコーディネートは完璧よ、だからアタシも今日はガーターベルトをしてみたわ」
今日のアリスは青を基調としたワンピースを着ていて、視線を下ろすと短いスカートと白いニーソックスの間に形成された絶対領域を通る白いガーターベルトが俺を魅了してくる。
だから俺の体がアリスに土下座するのも仕方のないことなのだ。
「ヤマト君何してるの?」
「このバカもやっとアタシの偉大さに気付いただけのことよ」
俺が携帯のレンズを向けるとアリスは自らフトモモを差し出し、こちらに綺麗な瞳を向けて微笑みかけるだけでなく、体の線が綺麗に見えるよう絶妙に姿勢を変える。
前から思っていたがこいつは写真に撮られ慣れている気がする。
まあアリスくらいの美人なら俺らの知らないところでモデルの仕事をしていても不思議じゃないけどな。
ダダダダダダダダダッ!
「ぎゃあああ! いつのまにドアが開いたんだぜ!?」
ショルダータックルの姿勢のまま突っ込んできたヒデオは玄関の段差ですっ転びリビングへ続く廊下の上をぶっ飛んで行く。
そこへ運悪くリビングからヒメコが登場、ドアを開けるなり見知らぬ男が飛び迫ってきたら当たり前だがヒメコはかなりビビリ、顔をこわばらせて、
「イヤッ!!」
膝を突き出しヒデオの顔面を潰した。
「ぶふぉ……」
鼻血を出しながらズルリと落ちるヒデオ、まるでゴミ虫を見るような目で見るヒメコ、こいつ身内の俺以外にも容赦ねえな……
そして玄関でイヨリの姿を見つけるなり親の仇でも見るようなを目をしやがる。
イヨリが小学生の時はこんなじゃなかった、だけどイヨリが中学生になった辺りから 急にヒメコはイヨリに対して今みたいな目をするようになった。
一体何が原因なんだ?
「アラ、ヒメコじゃない」
「えっ、まさか……お姉さま!?」
突然ヒメコの名を呼ぶアリス、そしてアリスの存在に気付いた途端ヒメコも顔つきが急に明るくなると、ヒデオを踏みつぶしながら駆け寄ってくる。
「お久しぶりですお姉さま、まさか覚えていてくれたなんて!」
「人の顔と名前を覚えるのは得意なのよ、それよりなんでアンタがここにいるの?」
「なんでってヒメコは俺の妹だぞ」
「は?」
アリスの目が点になって顔が固まった。かと思えばすぐに目を戻して、
「アンタ妹いたの!!!??」
どんだけデカイ声出してんだよ、思わず耳を塞ごうとしちまったぜ。
俺に妹がいたらいったいなんだってんだよ。
「兄弟いるのは知ってるけど、まさか妹なんて、だってアンタあれだけ妹欲しがってていつも妹妹って騒いで……」
「何言ってるんだよ、俺が欲しいのは可愛い妹であってこの可愛く無い暴力女は俺からすれば空気みたいなもんだよ、それより何でアリスはヒメコの事知ってるんだよ?」
アリスとヒデオはうちに何度も来ているがヒメコが出掛けてたり部屋にいたりで二人はヒメコに一度も会った事が無いはずだ。
「ほら、この前アタシの誕生日だったでしょ? あの時アタシのファンの子達に混ざって一緒にプレゼントくれたのよ」
ファン? そういえばあの日俺は掃除当番でアリスは先に帰ったけど校門の前に女子中学生達が集まってたな、色んな制服があったけど確かにヒメコの中学校の制服の子達もいたな、あの中にヒメコもいたのか。
「それでファンてなんだよ?」
「オレ様はグレープ味が好きなんだぜ」
馬鹿が鼻血を抑えながらファンタの好みを言ってくるが無視しよう。
「言ってなかったっけ? アタシ中高生向けの雑誌で時々モデルの仕事してるから年下にファンが多いのよ、まあ同学年以上の連中は嫉妬して寄り付かないけどね」
いや、高校でお前に女子が近寄らないのはお前の奇行(主にギロチン)のせいなんだが。
「ばぁ~かぁ~あぁ~にぃ~きぃ~」
見下ろすとヒメコが憎しみ全開で俺を見上げている。
何故だ、俺がお前に何をしたって痛い、スネを蹴るな、何故執拗にスネを蹴り続けるんだ、そこは弁慶でも泣くほど痛いんだぞ!
「何でアリスお姉さまと知り合いなの黙ってたんだよ! 兄貴がお姉さまの知り合いなんてこんな太いパイプあったら誕生会にだって行けたかもしれないのに!
ていうかあの日、友達の誕生会行ってくるってお姉さまのか! 何一人だけ楽しんでるんだよ!?」
「んなこと言ったってお前がアリスに憧れてるなんて知らねーよ」
「大丈夫、来年はアンタも招待してあげるから」
「ホントですか!?」
「ホントホント、アタシはバカ相手にしかウソをつかないのが自慢なのよ」
酷い自慢もあったもんだな。
「そんな事よりさっさと上がれよ、リビングでイヨリが持ってきた飯食おうぜ」
「うん」
と言ってイヨリが手に持っていた風呂敷包みを持ち上げるとヒメコの眉間にシワが寄る。
「マジで?」
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