第25話 選抜試験開始

 席について一〇分、試験官が試験の説明をしながらテストが入った封筒を配る。


 試験の説明が終わり試験官の始めの合図とともに全ての受験者が一斉に封筒からテスト用紙を取りだして名前とチーム名を書き始める。


 ルールは簡単、表裏印刷のテスト用紙二枚に全世界の歴史問題が二五〇問書いてあり、一問一点の配点で一時間以内に何問正解できるかを競い合計点数が高いチーム三二組がクイズキングダム本戦に参加できる。


 四人一チームなので一チーム最大点数は千点となる。


 だが、問題文を読む時間と手書きで答えを記入する時間の都合上全問解ける人は基本的にはいないらしい。

  

 六七一年、太政大臣になったのは誰か?        答え:大友皇子

 大宝律令が施行された年を答えよ。          答え:七〇一年

 免罪符に反対したルーテル教会の創始者を答えよ。   答え:ルター

 アヘン戦争で中国はどこの国に負けたか答えよ。    答え:イギリス

 四大文明の四つの文明は黄河文明、インダス文明

エジプト文明、あと一つは何か答えよ。        答え:メソポタミア文明


さすがに最初は簡単な問題が出る。


この程度、歴史研究会の俺達には朝飯前だが問題は後半だ。


一番での合格を目指すとは言っても流石に俺も満点を取れるとは思っていない。


 いくら俺が歴史マニアでも専門外の範囲であまり突っ込んだ問題は解けないからだ。


 古代ヨーロッパ、ペルシアの王、クセルクセス一世の在位期間は紀元前四八五年から何年までか答えよ。


 これは分からないな、ただしうちの古代史マニアとヨーロッパ史マニアの女子二人は必ず答えているはずだ。


 この試験で大事なのはあくまで合計点、時間が限られている以上とにかく分かる問題を一問でも多く解いて行くのが上策だ。


 二〇〇問目を過ぎた辺りからやたらとマニアックで答えられる人がいるのか疑いたくなるような問題が連発してくる。


 最後の方ほど問題が難しくなるみたいだけど、ベートーベンはコーヒーを飲む時にコーヒー豆を何粒使っていたかなんて知ってる奴いるのかよ、いやアリスなら知ってるだろうけどこんなの本当に歴史の問題か?


 歴史マニアじゃなくてベートーベンマニアのための問題だろ。


 一六〇問目に出てきた中華人民共和国の八つ前の名前はなんだって問題が超優しく見えてくるっての。


 ちなみに答えは北宋(ほくそう)だ。


 そんなこんなで問題を解き続けた結果、全問解ける人は基本的にいないと言っときながら俺が二五〇問目の問題を解いたのと終了ベルが鳴ったのはほぼ同時だった。


 周りの参加者の顔色が優れないことを考えれば自然と自分の実力に自信がついてくる。


 それと最後の問題は水戸黄門の名前で知られる水戸光圀が一番好きな食べ物はなにかという問題だった。


 答えは焼き鮭の皮の部分なのだがこの事実を俺以外に知る奴があの会場にいたかは甚(はなは)だ疑問である。


 参加者達が帰宅を始める中、ナデシコは去り際に一度立ち止まり視線を合わせてきた。


「結果は?」

「最高だよ」


 その答えを満足そうに聞くとナデシコは他の生徒会メンバー三人を引き連れて部屋を出て行き俺らも帰った。


 テストの結果が届くのは一週間後、そして合格ならさらに一週間後にテレビの収録がある。


 自信過剰、というわけではないが今回のテストをやった感じでは俺らは間違いなく合格しているだろうし、ナデシコ達も確実に合格しているはずだ。


 試験官の話ではチームリーダーの自宅に届く結果シートには合否の他にメンバーそれぞれの点数と四人の合計点、そしてチームの順位が乗っているらしい。


 でも同じ本戦出場でも順位に差がつけば本戦でのメンタル面には大きな影響が出る。

 一週間後、歴史研究会と生徒会の前哨戦(ぜんしょうせん)が始まる……けど。


「ヤマト君、早く帰ろ」

「ヤマト、早く帰って本戦に向けて勉強し直すわよ」

「妥当生徒会で京都に攻めのぼって天下統一だぜ!」


 今だけは、


「その前にどっか寄らね?」






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