第24話 ロボ超人
やっぱナデシコって暗黒のフォースとか使えるんじゃないか?
なんて思っているとナデシコは一瞬で俺の背後を取るとそのまま俺の両手首をつかんで俺に負ぶさるように腰の上に乗りつつ自分の両足を俺の腰から内モモへと絡ませ俺を前傾姿勢にさせたまま両手を高く釣り上げた。(この間0.5秒)
「大和流葬殺術奥義、ナデシコスペシャル!」
お前はどこのロボ超人だ!
ていうかお前の親父は某超人プロレスマンガの直下世代だろ!
お前騙されてるぞ!
「ぎゃああああ、時間とともに両肩と足の筋肉がぁああああああ!!!」
「やっぱり男ってそうなのね、やっぱりイテキやイヨリみたいな子がいいのね、所詮男なんてみんなソレが一番なのよね!!」
ソレってなんだよ!? ちゃんと言わなきゃ分からな、ああ優しさか。
「そんなの当たり前じゃないか、男はみんな女の子にソレを求めグハァ! ボハッ!」
何故だ!? 何故味方のアリスが俺の顔面をムチで打つんだ!?
「死ね! 女の敵!!」
パロスペシャルをかけられながらムチで打たれるにも関わらず周りの学生達は目を逸らすばかりで誰も助けてくれない。
トラブルとは関わりたくない他人よりも自分の身が大事、お前らは全員現代っ子の鑑(かがみ)だよ! ああ鑑だとも! これからは悪い見本の歩く教科書として生きろ!
くそ、他人事のように! 事実他人事だけどよ!
「ってお前は何やってんだよ!?」
気付けば俺の首にはギロチンがセットされていてアリスが刃に手をかける。
いや、これもうジョークで済まないだろ。
「だめだよアリスちゃん! それ以上は冗談じゃ済まないよ!」
「副会長もそろそろ離さないと千石君の両腕もげちゃいますよ!」
慌てて止めてくれるイヨリとイテキ先輩(ふたり の てんし)に対して俺は心の中で最大級の感謝をするのだがアリスとナデシコ(ふたり の あくま)は大きく舌打ちをして、残念そうに渋々パロスペシャルとギロチンをはずした。
お前ら、そんなにも俺を殺したかったのか……
「それじゃあ一時休戦てことでみんな仲良く受付けに行こうか、いいかいナデシコ?」
「ま、まあお兄様がそう言うのでしたら」
相変わらず兄貴の言う事は簡単に聞くな、兄妹そろってシスコンブラコンだから当たり前だけどな。
こうして俺達は先に中で逆立ち腕立て伏せをして待っていたヒデオと合流すると、受け付けを済ませて試験会場へと向かった。
試験会場はいくつかの部屋に分かれていて、俺らは同じ学校だけにナデシコ達と同じ部屋で学園の教室の何倍もある広い部屋には四人用の長テーブルが奥まで等間隔に並べられていた。
受け付けで言われた番号のテーブルへ行くと〈歩御高等学校 歴史研究会〉と書かれた紙製のポップが置かれている。
ナデシコ達のテーブルは俺らの丁度後ろで〈歩御高等学校 生徒会〉と書かれた同じく紙製のポップが置かれていた。
チーム名に高校名が入っているのは宣伝効果を狙ったロリ校長の命令で、兄弟や別の高校同士の生徒が組んでいるチームは勿論、他のチームは結構自由につけている。
当然ながらどのテーブルにも学生服姿の男女が座り、一部私服の人がいるのはおそらく大学生か私服の高校へ通う生徒だろう。
皆ギリギリまで覚えようと必死になって歴史の本を読んでいる。
テーブルと試験室の数から受験者はおよそ六〇〇人、日本中からこの日の為に歴史の勉強に力を入れてきた秀才天才の高学歴者達がそろっている。
普通に考えれば俺らがこいつらに学力で勝とうなんて無謀過ぎるが歴史研究会として負けるわけにはいかない。
イヨリ達と一緒に京都へ行く為に、そしてここの連中に偏差値差じゃ埋められない俺達の歴史へ対する情熱を見せてやる!
「ねえちょっとあの人」
「うわぁ、同じ試験場だったんだ」
「え~やだ~」
周囲からは痛い視線とヒソヒソ話が聞こえるのはきっとヒデオが逆立ち腕立て伏せをしていたからだろう。
まったくもって迷惑な奴である。
「ほらあの人だよ」
「入口でパロスペシャルされながら」
「ムチ責めギロチンの」
「ドMよねぇ」
落ちつけヤマト、きっと今のは今週まだイヨリに耳かきをしてもらっていないからだ。
俺は決してヒデオみたいな馬鹿とは、
「逆立ち男と同じチームだったんだー」
「あーなるほど、類は友を呼ぶって奴ね」
違うんですみなさん、俺は馬鹿じゃないんです。
俺の周りが馬鹿なんです。
俺はそれを強く主張したい。
「みんな! 絶対に一番で合格するぞ!!」
「どうしたんだぜヤマト、なんか尋常じゃない気迫を感じるんだぜ」
「まあそんなの言われなくてもそのつもりよ、本戦の前に実力の違いを見せてやりたいし」
アリスが横目でナデシコを見ると向こうも鋭い目つきでアリスを睨む。
「同感ね、みんな、この選抜試験で目指すは一番よ」
ナデシコの静かだが怒気がこもった声に、マモリとイテキ先輩はそろって「「ハイ」」と答えて、タケルさんだけは「はいはーい」とこの状況を楽しむように笑っていた。
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