第23話 クイズキングダム選抜試験
翌日の日曜日、俺ら歴研の面々はクイズキングダムに参加するための選抜試験を受けるために歴史を作るテレビ局、通称歴テレのビルに向かっている。
ビル群に囲まれた街中には昼時であることもあって様々な人が行き交うが、俺らと同じ方向に向かって歩いている人達が学生と思われる背格好の人々であるところを見ると全員目的は同じだろう。
電車に乗っている時からやたらとワイシャツにスラックス姿の奴が多いとは思ったがこれは相当な数だ。
すでにテレビ局に到着した奴や後から来る奴らを含めたら二、三〇〇人は集まるんじゃないか?
ちなみにクイズキングダムは制服着用だがなんで選抜試験も? と思うがアイコ先生曰く今のうちから画面に映った時の俺らの雰囲気をつかむためらしい。
まだ選抜試験に合格してもいないのにご苦労なことだ。
「テレビ局が見えてきたんだぜ!」
子供っぽくはしゃぐとヒデオは俺らから離れて一人で突っ走り赤信号を横断した。
「凄いわね、ヒデオに釣られて信号待ちの人が全員歩いちゃってるわよ」
「でも途中で気付いて慌てて戻……らずに渡っちゃったね……」
そりゃそうだ、現代っ子は気が短すぎて捕まえてきたホトトギスを三秒で殺しかねないからな。
ともあれ車が来てなくて助かった。
まあヒデオは車にはねられてもワンカットで再生するギャグ漫画体質だし心配する必要もないのだが。
などと考えている間に俺らも信号を渡りテレビ局の中に入って、
「待っていたわ、千石大和とオマケのみなさん」
「げげっ、ナデシコ! なんでお前達がここにいるんだよ?」
「げげっ、とは失礼な奴ね、この私の顔がそんなに見たくなかったのかしら?」
テレビ局の敷地内に入ってビルの入り口を目指そうと思ったらいきなりナデシコなんて、魔王が城の前で勇者が来るの待っているようなもんじゃないか、どんだけ気が短い魔王だよ、ラスボスはもっと勇者を信頼して最上階でどっしり待ってろよ。
「そういうわけじゃねえけど、つか生徒会がそろってなんでここにいるんだよ? 着いたならさっさと局に入ればいいじゃないか」
「私達も今、着いたところなのよ、そうしたら貴方達の声が後ろから聞こえてきて」
「何を言っているんですかお嬢様? 三〇分も前に着いたのにここでヤマト達を待つと、かたくなに拒み、会って最初に言う言葉をずっと考えぐぅっ!!」
ナデシコのヘッドバットがマモリの顔面に綺麗にキマって眼鏡は四散、マモリはよろめいてタケルに支えられた。
「お、お譲様……わたくしが一体何を……」
「貴方は余計な事を言わなくていいの!!」
「マモリちゃんかわいー」
怒鳴るナデシコと対照的に兄貴は上機嫌だな、まあ確かに今のマモリにはドジっ娘にも似た可愛さがあるけど本当にどこから見ても三六〇度残念な子だなぁ。
「どうも皆さん、この前はお世話になりました」
「イテキ先輩どうも、まあ世話って言っても気を失ったタケル先輩(一六〇㎏)をイヨリが一人で右肩に担いで二キロ先の自宅まで送っただけですけどね」
「イテキ! 勝手にヤマトと話すんじゃないわよ!」
「す、すいません副会長」
後輩のナデシコに叱られて怯えるイテキ先輩、本当にどこから見ても三六〇度可愛い人だなぁ。
「ナデシコ、さっきから怒鳴ってばかりで何か嫌な事でもあったのか? 別にイテキ先輩が誰と話そうが自由だろ?」
「それは……そうだけどヤマトと……」
何故か俺には怒鳴らずうつむいてごにょごにょと呟くナデシコ、普段は冷静沈着なお嬢様で俺の前では怒鳴ってばかりで、かと思えば急に黙りこんだり俺は幼稚園の頃からこいつと一緒だがこいつを理解できる自信は無いと言い切れる。
一度病院で看てもらったほうがいいぞ、精神科医だけどな。
「でも古跡(こせき)さん本当に大丈夫だった?」
対照的に敵対関係にある歴研のイヨリの事を気遣ってくれる心の綺麗なイテキ先輩、話す相手が俺じゃなければいいのかナデシコは何も言わないけど先輩の爪の垢をこの腹黒凶悪お嬢様に飲ませてやりたい。
「あれくらい朝の稽古に比べたら楽なもんだよ」
優しい笑みを見せてイテキ先輩の不安を取り除くイヨリ、この娘の髪一本でもナデシコに飲ませればきっとナデシコからはみるみる狂暴性が失われ、ついでにその少年と見間違うようなボディラインも改善されるに違いない。今度アリスにも飲ませてみよう。
「ヤマト、貴方今凄く失礼な事考えなかったかしら?」
「失礼な事なんて考えてねーよ、ただナデシコがイヨリやイテキ先輩みたいになればいいのにって口が滑ったぁああああああ!!」
ナデシコのグーが俺の腹を直撃、腹を抱えて思わず前のめりになってしまう。
何故俺の思考がバレたんだ。
やっぱナデシコって暗黒のフォースとか使えるんじゃないか?
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