第21話 生徒会長

 イヨリの家の人はそこまで強いのかと突っ込んでやりたいがその七人を無傷で倒すあんたは何者だ!


「ナデシコの言葉はおにいさんが伝えてあげるよ、愛しのヤマト君」

「はは、久しぶりですねタケルさん」


「本当だよ、四月以来だったかな、君とイヨリちゃんならいつでも生徒会室に遊びに来ていいのに、ヤマト君てばナデシコに拉致られた時しか来ないなんて、それともおにいさんに緊縛姿以外の格好を見られるのが恥ずかしかったのかい?」


「どんな変態ですか……身長と一緒に妄想癖も酷くなってるんじゃないですか?」

「四月から二センチは伸びたかな」


 この人、成人する頃には風魔小太郎もびっくりの大巨人になるつもりか?

 まあ子供の頭ならすでに握力で握り潰せそうだけどさ。


「それじゃ伝言ターイム」


 タケルさんは青い着物の袖口から一枚の紙を取り出して広げると、一目見てすぐにまたしまって綺麗な笑みを作る。


「我が妹ながら過激だねー、まあおにいさんの口からそのまま伝えるにはちょっとキツイしここは手紙を無くしたって事にしてくれないかい?」

「まるで小野妹子ですね」

「流石は歴史研究会会長、じゃあ君は聖徳太子のように大体の内容は察してくれるかい?」


 まあナデシコからの伝言なんておおよその想像はつく、あいつとの付き合いはそれだけ長い。


「自分に従え、これは貴方のために言っている。どうせ自分には勝てない、だからずっと自分の側にいなさい、そんなんですよね?」


「ご名答ヤマト君、まあ実際にはそれを一〇〇倍恐ろしい文章で書いてあったんだけど、妹がこの家に来なくてよかったよ、あの子はどうもヤマト君の事になると見境がつかないというかなんというか、妹と君が対面していたらそれこそ君との関係が修復不可能になっていたかもね」


 さらりと凄い事を言っているがナデシコならそんな感じだろう、まあ流石に修復不可能な関係にはならないだろうけど。


「随分余裕ですね、シスコンなのに妹の計画が心配じゃないんですか? それとも自分達が勝つに決まってるとか?」


「ははは、いくらおにいさんでも歴史研究会相手に歴史バトルで勝って当然なんて思ってないよ、まあ仮にこの戦いに負けても別にヤマト君が転校していなくなるわけじゃないし、これまで通り妹のクラスメイトのまま、だったらおにいさんは今回の事は純粋な勝負事として楽しませてもらうつもりだよ、ちょうどうちの可愛いイテキちゃんにも好敵手ができたみたいだしね」


 ナンバ先輩の背後に立っていたタケルさんは覆いかぶさるようにして抱きつくと、そのまま先輩に頬ずりをしながら目を細めて極上の笑みを浮かべる。

 一体なんて羨ましい、是非俺もあやかりたいものだ。


「かか、会長やめてください」

「みんな相手がいていーなー、じゃあおにいさんは余った者同士イヨリちゃんとでも敵対しちゃおうかな」

「かいちょー!」


 紅潮しながら恥ずかしがる先輩が可愛過ぎる、俺の携帯電話のシャッター音が止まらないぞ。


「なんの躊躇いも無くうちのイテキちゃんを撮るなんてさすがヤマト君、でもおにいさんはもうイテキちゃんの写真なんてアルバム五冊分も持っているんだよ」

「いつ撮ったんですか会長!?」


 ナンバ先輩知らなかったんだ。


「そんなの生徒会室にしかけた一八台の監視カメラの静止画像とシャッター音を消したおにいさんの携帯電話や超小型デジタルカメラを使えば簡単さー」

「はうぅ……」


 恥ずかしがるナンバ先輩。


 本人の了承も無く勝手に撮るなんて許せない、撮るなら俺のように堂々と撮るべきだ。

 いくらナデシコの兄でもこの事実を見過ごせるほど俺は大人じゃなかった。


「その写真いくらで印刷してくれますか!!」

「ヤマト君の馬鹿!」


 イヨリの蹴りが俺の背中を直撃、軋む背骨、逆エビ反りでぶっ飛ぶ俺の体、それを天井に激突する前にバレーボール選手よろしく畳に叩き落とすタケルさん。

この二人繋がってたのか?

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