第20話 ゴリアテ生徒会長!
「それは偶然です。実は本屋から逃げた後のみなさんの行動がわからなかったので生徒会メンバー四人でそれぞれみなさんの家に行く事になったんです」
「じゃあもう一つだけ、どこからわたしの家に忍び込んだんですか?」
「私普通に玄関から入りましたよ」
「そんな!? わたしの部屋に来るには四天王と大幹部三人衆を倒さないとこれないはずなのに!」
「お前の家はいつから魔王城になったんだよ、安土城でもそんな警備してないぞ、でも正面から入ったってことは先輩あのデカイ門開けられたんですか?」
「いえ、それは生徒会長が指で開けてくれました」
「会長って、タケルさんが指で?」
「はい、実は私、道に迷っちゃって、そうしたら先にアリスちゃんの家に行った会長が心配して来てくれて合流したんです」
恥ずかしそうに頬を染めて先輩は頭をかいて喋る。
「四天王と三人衆さんも今生徒会長が一人で相手をしてくれていてそのおかげでここまでこれたんですよ」
「それマジでかっこいいぜ! 張飛みたいで憧れるぜ!」
「ヤマト、副会長のお兄さんてベヒーモスか何か?」
「いや、人間だけど強さはベヒーモスだな」
「とにかく」
と言って先輩は一歩前に出る。今更だけどやっぱりデカイ、近くに来られるとこの場にいる全員が思わず見上げてしまう。
「副会長からヤマト君へのメッセージを伝えます」
「いや、その必要は無いよイテキちゃん」
フッと部屋が暗くなり軽快な声が頭上から聞こえる。
この声は……またアリスが騒ぐな。
「どうも、生徒会長の大和(やまと)猛(たける)おにいさんだよ」
「何そのゴリアテみたいなの!? フリードリヒ大王が見たら銀貨八千枚と庭付一戸建てでスカウトするわよ!!」
やっぱりな、明日からタランテラのCD持ち歩こうか。
ナデシコ同様に昔からよく知るこの人はナデシコの一つ上のお兄さんのタケルさん。
日本人とは思えない圧倒的な長身、そして着物の上からでも分かるほどの圧力と密度を感じる鍛え抜かれ洗練された筋肉の持ち主で文武両道質実剛健を体現したような人だ。
ただしタケルさんは決してむさくるしい筋肉野郎などではない。
ナデシコ同様髪はサラサラだしまず悔しいくらいの美形で確かに肩幅は広いし手足は太いけどそれはキックボクサーのような体型であり、柔道家やプロレスラーのようなゴツイ体はとは一切無縁だ。
その長身スポーツマン体型のイケメン生徒会長はアリスを見降ろすとニコリと笑う。
「フリードリヒ・ヴィルヘルム一世、プロイセンの兵隊王で長身の兵士を好みヨーロッパ中から背の高い男を勧誘、誘拐し長身揃いの連隊を組織し何倍もの給料を支払い特に背の高い兵士には庭付一戸建てを与えたり彫像や肖像を残し二一六センチのスコットランド人にはターラー銀貨八千枚を払った。
ゴリアテは旧約聖書に登場するペリシテの三メートル近い巨人兵士で当時羊飼いのダビデが投げた石が頭に当たって転倒した後で首をはねられて死亡、そうだよね、歴史研究会の西野(にしの)文香(ふみか)アリスちゃん?」
「ぐっ……」
「もっともお兄さんを倒したかったら石じゃなくてカノン砲を持ってきてね」
アリスが眉間にシワを寄せる。
今タケルさんが言った知識は完璧だ。
全国五位のアリスのさらに上、全国模試三位の実績は伊達じゃない、この人はその異常なほどの好奇心で一つを勉強するとそれに関連した一〇の事を調べ、そして全て暗記してしまう。
今のもヨーロッパ史でプロイセン王国のことを勉強した時に歴代の王様全員のことも調べて、その中でも風変わりなフリードリヒ一世の事を特に詳しく調べただけだろうし、ゴリアテも旧約聖書を一度読んだだけだろう。
努力でもなんでもない、ただ知りたかったら調べて覚えた。それだけで成績一一年連続学年一位をキープしてきたのがこの人、ナデシコの兄タケルである。
「か、会長、あの人達はどうしたんですか?」
「四天王と三人衆ならみんな倒してきたよ、いやいや結構強かったなー、おにいさんじゃなかったら国崩し砲を持って来ても瞬殺されていたよ」
イヨリの家の人はそこまで強いのかと突っ込んでやりたいがその七人を無傷で倒すあんたは何者だ!
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