第16話 ハート型ストロー
「おかしいだろ!!」
想定外過ぎる!
まさかこの俺が驚くような事が起こるとは思わなかったがここはツッコまなくてはなるまい。
「なんでコップが二つなんだよ!?」
「わ、わたしの家、コップ二つしかなくて」
「門下生三〇〇人が通う道場になんでコップが二つしかないんだよ!?
しかもコップってか盃だろ!! 聖杯だろ!! なんの祝杯あげるんだよ!?
そもそもなんでハート型ストローなんだよ!?」
「わたしの家ストローってこれしかないんだよね」
「なんのイジメだよ!? この筋肉ダルマ達の血と汗と筋肉飛び散る益荒男(ますらお)空間にハート型ストローしかないってあいつらいつもそれ使ってんのか!?」
「そうだよ! わたしの家ではみんなハート型ストローで飲み物を飲むしきたりになっているんだよ! だからヤマト君もこれで一緒に飲もうよ!!
このしきたりを破ると熱病(マラリア)を持った蚊に毎日刺される呪いを受けるか、うちの門下生達とローションツイスターゲームをしなくちゃならないんだよ!」
「どういう二択だよ!?」
それに俺に差し出すグラスだけ溶けかけの錠剤が入っているように見える。
なんか今日のイヨリはおかしいぞ、暑さでおかしくなったか。
「まあいいじゃない、アタシ達に遠慮しないで若い二人でちゅるっとやっちゃいなさいよ」
「楽しそうにしているけど俺とイヨリが飲んだらお前はヒデオと飲む事になるけどいいのか?」
「イヨリ、女の子同士でもいいと思わない? ううん、今アタシすっごく百合(ゆり)な気分なの、今すぐこのストローでアタシと飲みましょう」
「よし、じゃあヤマト、オレ達も早くこれ飲――」
「誰がイヨリを渡すかぁあああああああ!!」
ヒデオとラブラブドリンクタイム?
そんな不条理がまかり通るなら俺は今すぐ日本政府に一人一揆で下剋上してやる!
「退(の)きなさいヤマト! バカはバカ同士見つめ合いながら飲んでなさい!」
「もしアリスとイヨリが飲むなら俺の携帯カメラ攻撃がガトリング式に火を吹くからな!
学校中にお前のレズビアン疑惑写真をバラまきさらに画像をチェーンメールだ!!」
「いいわよそれで! アンタかヒデオとラブラブドリンクタイムするより百倍マシだわ!
それにヤマトの携帯なんてアタシらのメルアドしか入ってないでしょ!」
「ぬぉおお、人が気にしている事を!!」
アリスと手を組んで押し合いリング中央で力比べをするレスラーのような体勢になったまま睨み合う。
アリスも必死に抵抗して決着は一向につく気配がない、でもそうだ、良く考えてみればこれは美少女とマンガ的シチュでジュースを飲める絶好の機会、俺にイヨリを拒む理由なんて一つも無いんだ!
「イヨリは俺のモノだぁああああああああああああああ!!!」
「ヤマト君たらそんな大声で言わないでよ!!」
イヨリのアッパーカットが俺の顎を直撃。
きりもみ状に回転しながら俺の頭は天井を貫き体は天井からぶら下がった。
全体重が首にかかって非常に苦しいはずなのに痛みを感じないのはきっと死が近いからだろう。
ああ、下界の言葉が小さく聞こえるぜ。
「ヤマト君たらあんなハッキリと、ああでもヤマト君がそう言ってくれるならわたし……」
「結局オレは一体誰と飲めばぐばはっ!!」バタ!
「これでストローと人数が合ったわね、ほらイヨリ、いつまでも見悶えてないでジュース飲んじゃいましょ」
あれ? この展開はもしかしてジュース飲み終わるまで放置フラグ? 結構首限界なんですけどわかってます?
「そのまえにヤマト君助けなきゃ」
そうそう、イヨリは良い子だなぁ、ホントこういう可愛くて素直な妹が欲しぶがっ!!
「えい!」
足首をつかまれ一瞬で引きずりおろされた俺の頭はなんの支えも無いままテーブル目掛けて振りおろされた。
なーんだ、立ったのは死亡フラグだったのか、こうして俺の顔面はイヨリ自慢のモアイテーブル(素材不明だけど超頑丈)に直撃した。
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