第27話 姉さんゴジラ
大麻を家まで送ってから、俺は自分の家に帰るといやでも明後日のデートの事を思ってしまう。
本当に、冗談抜きで成功して欲しい。
すると、そこへいつもと雰囲気の違う千秋姉がリビングから歩いて来る。
「どうしたの春人? 溜息なんかついちゃって」
「今日は抱き突かないんだな」
いつもなら俺が家に帰るなり跳びかかってくるはずなのだが、千秋姉は穏やかな笑みを浮かべてこちら見るだけだ。
「あれれぇ? 抱き突いて欲しかった? ごめんね空気読めなくて」
千秋姉の腰が落ちる。
「四八の貞操奪取術! サイクロンストライク!」
腰を落とした姿勢から一瞬で加速。
横っ跳びで飛来する千秋姉はサイクロンの名前通り、きりもみ状に回転しながら猛スピードで俺に突っ込んでくる。
ていうかその動きは物理法則を無視している気がする。
だが俺も負けてはいられない。
こんな姉の非常識は幼い頃から慣れ親しんでいる。
「四八の貞操守護術! グングニル!」
俺は右手の指を伸ばし切った状態で敵を貫く、いわゆる手刀で千秋姉の人中に狙いを定めた。
人中、鼻と口の間にある人体の急所で、顔面神経の分岐点。
あまりに小さすぎる急所だが、そこを正確に鋭打したならば相手は手足が麻痺し動けなくなる。
もしくは仮死、最悪は死に至る。
ただしそれは人間の話。
この規格外の怪物千秋ゴジラにはきっと足止めにしかならないだろう。
だが足止めで十分。
十分の一秒でも足止めできたなら俺はこの一〇〇メートル一一秒ジャストの足で我が家の良心キングオブマザー咲子の元へと逃げ込める。
「しねぇええええええええ千秋姉ぇえええええええええええ!!」
だが千秋姉は頭を伸ばし、人中を隠して俺の指先に頭をぶつけてきた。
たまらず俺は体ごと弾きあげられて天井に叩きつけられる。
俺を貫通した千秋姉はそのまま突き進んでまた玄関のドアを使った三角跳びで帰ってくる。
狙いは俺の下半身。
天井から床へ、頭から落ちる俺は上下逆の状態である。
千秋姉はルパンダイブの如く一瞬で衣服を脱ぎ去ると俺の下半身に襲い掛かる。
上下逆の空中ではさしもの俺も抵抗は不可能。
回転する千秋姉が激突した瞬間、俺のズボンとパンツは四散して下半身の全てが晒されてしまう。
「のぉおおおおお! 俺の! 俺のぉおおおおお!!」
「全裸でわっしょーい!」
そのまま俺にしがみついて一緒に落下。
廊下に叩きつけられた時にはマウントポジションを取ろうと千秋姉が毒牙を剥いて襲い掛かる。
俺はうつぶせになって必死に抵抗するも細腕のくせして二〇〇キロバーベルを笑顔で上げるゴジラウーマンには勝てなかった。
ついにマウントポジションを取られ、全裸の千秋姉が爆乳を揺らしながら、むぎゅっと覆いかぶさってきた。
「ねぇ春人ちゃん、春人ちゃんは大麻ちゃんの事好き?」
てっきり俺の貞操を奪うのかと思ったら、耳元で千秋姉は囁くように、急にそんな質問をしてきた。
「え? そりゃあいつは友達だし、今日までずっと料理教えて来たから好きだけど」
千秋姉は上半身を起こして俺を見下ろす。
「そうじゃなくて、女の子として好き?」
いつもと違う、真剣な眼差しに唖然としつつ、俺は嘆息を漏らした。
「そんなわけないだろ? そもそも俺は大麻と戸田の恋が上手くいくように強力してきたんだぞ、あいつは俺の弟子二八号、それだけだ」
「ふーん、本当に?」
「しつこいな、本当だよ」
質問の意味が解らず、俺は否定を続ける。
すると、千秋姉の顔がいつものバカ明るい笑顔になって、
「じゃあやっぱり春人はお姉ちゃんのー♪」
「ぎゃああああああああああ!!」
また抱き突いて来て、俺の夜の大戦争が始まった。
こうなったら今夜は四八の貞操守護術の奥義を見せてやる!
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