第24話 20点


 最低の高校生活だと思ったけど、こいつと知り合えた事だけは良かったと思う。


 まったくもって戸田が羨ましい限りである。


 俺にそんな権利は無いけれど、もしも大麻を泣かせたらブン殴ってやる。


 俺はただ、素直にそう思えた。


「ところで今日は何点?」

「二〇点だな」

「……合格点は?」

「まあ八〇点の手料理を作ってくれる女子がいたら俺ならトキメクな、というわけで八〇点を目指すぞ」

「ハードル高…………」

「そりゃまぁ」


 俺は、台所の端に隠すようにつみあげられているブツにチラリと視線を投げて、意地悪な声を出す。


「食事カップ麺とレトルトに頼っているような奴にはハードル高いよなぁ」

「うわぁー!」


 イスから跳び上がり、慌てて積み重なったカップ麺の容器とレトルトの空パックの山の前に立ちはだかる。


 ゴミを溜めこみやがって、こいつには料理以外にも家事のなんたるかを一から教えてやる必要がありそうだな。


「『家事なんてやった事ないから一人暮らしは色々大変だったけど』とか言っていたけど、そんな物に頼ってる奴がどの口で言っているのかな?」

「だ、だってあたし本当に料理なんて全然できないし、それで最初は自分で作ろうとしたけど全然ダメで、それで仕方なくカップ麺食べてたら……あんまり便利であたしもカップ麺の味好きだし、食事はこれでいいかなって……」

「たわけ! カップ麺女子においしい弁当が作れるなどと思うな!」

「カップ麺だって最近はバカにできないんのよ! 種類も豊富で各企業が様々な味が揃っていて」

「まさか俺が特訓始めてからも食べてるんじゃないだろうな!?」

「そ、そんなわけないでしょ! ちゃんと自分の失敗したやつの片付けしてるわよ!」

「ほほう、まぁここは大麻(たいま)を信じておこう」

「だから大麻(たいま)って言うなぁあああああああ!!」

「ひでぶぅっ!!」


 世界を狙える右ストレートが俺の頬を打ち抜いた。


 ああ、こういうのを無くせば完璧なのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る