第15話 女番長の正体
「そういえばお前さ、なんで魔王とか女帝だとか言われてんだよ?」
「そ、それは……」
言葉を曇らせる大麻、こいつまさか……
「ま、まさか本当に学園に破壊と絶望を振りまいていたのか!?」
「ち、違うわよ!」
恐れおののく俺に大麻は声を荒げてから、急に元気が無くなる。
「あれは、その……お姉ちゃんのせいなの」
弱々しい声に俺の胸がトキメク、なんか口調も変わってる気がするがこれが本来の大麻だろうか?
「実はあたし、双子のお姉さんがいて」
え? こんな美少女がもう一人いるの?
「それであたしと同じ顔の姉さんの趣味が道場破りと族潰しだったの……」
ああ、なるほど……
それで俺は全てを悟った。
「姉さんいつも自分の事『北丘(きたおか)中学の大麻(おおあさ)だ』としか言わないしいつも背中に『大麻』って書いたシャツ着てて」
大麻の顔に影が差して、全身から負のオーラが溢れだす。
「しかも学校同じなのに姉さん学校に全然来なくて、おかげで北丘中学の大麻って言うのはあたしの事だとみんな勘違いして、名前もあたしが弥生(やよい)で姉さんが間宵(まよい)で聞いた感じ似てるし……」
ソファに右手をついて大麻の両肩が落ちる。
「うぅ……おまけにあたし、見た目こんなんだから、みんなあたしがちょっと見ただけですぐに『殺される!』とか言って逃げちゃって、あたしはただみんなと遊びたかっただけなのに……」
ご愁傷様。
「でも髪染めてるお前にも責任は」
「これ地毛」
すいませんでした。
「それでその肝心の姉さんは?」
「無駄に勉強できるからアメリカの高校に留学しちゃった」
きっと今頃アメリカの裏社会を牛耳っているに違いない。
ていうか同じく姉に苦労させられている者として共感せずにはいられない、ああ、どうして姉は弟や妹を自分の犠牲にするのだろうか?
「えーっと、じゃあ入学式からずっと休んでいたのは? 入学早々お前が周辺の勢力全部潰して周っているって噂だぞ」
俺の発言に大麻は慌てて右手を振って否定する。
「ち、ちがっ、あれは入学式の日に風邪ひいて、それが長引いて治ったと思ったら新しく買って置いたスキンクリームが肌に合わなくて顔腫れちゃって、それで恥ずかしくて腫れがひくまで学校休んでただけで」
ドジというか……不幸だな、こいつ。
「新しく買ったクリームは肌に合うかどうかまずは腕にちょっとだけ付けなきゃだめだろ」
「わ、忘れてたの」
「ていうかパッチテスト入っているんだろ、気付かなかったのか?」
「後で箱ひっくり返したら、それだけぽろって落ちて来た」
やれやれ、困ったお姫様だ。
「ほい、これで手当て終了」
「え? もう終わったの?」
自分の手をしげしげと眺めて大麻は『わぁ』と驚いた。
「ぜ、全然痛くなかった」
「そりゃ会話に集中させてたからな、治療の時は相手とお喋りをするのは効果的だぞ、あとはひたすら慈愛パワーの賜物だ」
「じ、慈愛?」
頭上に疑問符を浮かべやがって、仕方ないからこの家事マスター新川春人様が慈愛パワーについてレクチャーしてやろう。
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