第14話 女子寮で全裸待機されていた
「ここが女子寮か?」
SGT学園の生徒専用に新築されたそこは、同じく新築の学園と同じで綺麗な外観だった。俺は花が咲き乱れる塀に囲まれた敷地内に入って、自動ドアをくぐる。当然すぐに認証システム搭載の自動ドアに行く手を阻まれた。
監視カメラを見ている人は、入学式初日になんで男子がいるんだろうと不審に思い、一一〇番の準備をしているかもしれない。
俺は暗証番号を入力するコンソール横のスリットに、月見里からもらったカードキーをスライドさせる。
ポーン。というこぎみ良い電子音と共に、自動ドアが従順に開く。
洋館を思わせるお洒落なロビーからエレベーターへ。
三階のボタンを押すと、階数表示の下の画面に暇つぶしのためだろう、今日の雑学という文字が浮かんだ。
エレベーターが持ちあがる中、ネットサーフィンが趣味で雑学好きな俺は、また無駄な知識を増やしながら月見里の住む三階へ到着。
チーン。という電子レンジみたいな電子音を鳴らしてからドアが開いた。
「えーっと、三〇四、三〇四……ここか?」
部屋番号と『月見里心愛』という表札を確認してからチャイムを鳴らす。
「……あれ? いないのかな?」
返事がないので、試しにもう一度チャイムを鳴らす。
それでも反応は無かった。
留守なのかと思ってドアノブをひねると、カギは閉まっているようだ。
「そういえばお茶菓子が足りなかったら買い出しに行くって言っていたよな」
玄関から左手に持ちっぱなしだったカードキーに視線を落とす。
留守だったら部屋で待っていて欲しい、と渡されたカードキーを、ドアのスリットに通した。
ガチャリ。と、驚くほど簡単に解錠。俺はドキドキもワクワクも無しに入室した。
もしも俺以外の男と組むような事があったら……そう考えるとただただ月見里の事が心配だった。
こういう無防備なところは可愛いと思うけど、やっぱり駄目だと思う。
俺は玄関から上がり、廊下の奥のドアを開けて、リビングに入る。
寮は家具付きで、ガラス製テーブルのまわりに、ソファがコの字型に配置されている。
そなえ付けのテレビは二〇一九年に開発、翌年に発売が始まったFEDテレビだった。
ずいぶん贅沢っていうか、待遇がいいな。
まぁセカンドは貴重な人材だからな、退職しないようアメを与えているんだろう。
「ん?」
良く見ると、俺に背を向けるソファの端から、白くて繊細な美脚が伸びている。
それも、左足はスネから先を覗かせる反面、右足はソファの横下から足先を出す程度だ。
月見里のやつ、ソファで寝ちゃったのか。
しかも右足だけソファの下に落としちゃって。寝崩れた月見里を想像して、俺は心がほっこりしてしまう。
起こすべきか、それとも起きるまで待つべきか悩むな。
そんな事を考えながら、俺は月見里の足側へと回りこんだ。
まぁおっとりさんはこれぐらいの方が可愛いけどさ――――――――――――――
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
その時、確かに俺は数秒、全身の細胞が時間を止めた。
両目を限界以上に開眼させながら、視界がレッドアウト寸前になるまで血走らせたまま何もできなかった。
俺の思った通り、ソファの上には月見里が仰向けに寝ていた。左足は放り出して、右足と右腕を床に落として、左手はお腹の上に乗せた姿勢だった。ただし……
一糸まとわぬ全裸である。
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