第5話 勝ち組人生か!?
何にかは分からないけど『勝った』と心の中で叫ぶ。
そんな俺に、姉ちゃんが水を差した。
「ちょっと子府、勝手な事言わないでよ」
姉ちゃんは、音威さんの誘いをカットするようにして割り込む。
「気にしないでね弟ちゃん。ほら、SGTって犯罪者と戦う危険なお仕事だし。お姉ちゃんとしてはあんまりお勧めできないかなぁ」
言葉を濁しながら、視線を逸らす姉ちゃん。
真っ向から反対すると、反発心で俺が入りたがるとでも思っているのかもしれない。
「正直に言わせて貰うけど、セカンドが持つ防護力は万能じゃないし、能力の限界を越えて意識を失う『喪失状態』の間は効果が薄くなる。犯罪者達の中には想像もできない程、強力なセカンドがいるかもしれないし、この仕事は怪我じゃ済まない場面も予想されるわ」
姉さんの説得が冷却材となって、俺は興奮した頭を冷やした。
確かに、まるで漫画みたいに出来すぎた展開だけど、これは現実だ。主人公補正なんてない。
都合よく力が覚醒したり、ピンチに助けが入ったり、敵の攻撃が急所を逸れたりしない。
事件に巻き込まれて死んだ警察官のニュースとかを思い出して、背筋がゾクリとした。
別にSGTに入らなくっても、この炎能力一つあればとりあえず俺は学校の人気者。
来月入学が決まっている高校で華々しくセカンドデビューしたほうが賢いかも?
部屋の外から、慌ただしい足音がしたのはその時だった。
冷えた頭で機械的に判断をしている俺が振り返ると、検査室のドアが勢いよく開いた。
メガネをかけ、高そうなスーツに身を包んだ女性が入室してくる。
「新妻さん! 不知火優華以外にもセカンドを見つけたって本当!?」
「ええ、うちの弟がどうやらセカンドだったらしくて」
メガネの女性は右手でガッツポーズ。
佇まいを直すと、突然俺にすり寄って来る。
「みぐるしい所をみせちゃったわね。君が新妻さんの弟さんね、私は貴方のお姉さんの友達よ」
自己紹介によると、彼女は現総理大臣が所属する政党、つまりは与党の女性議員で、SGT創設の関係者らしい。
「ねぇ君、平和の為に働いてみる気はない?」
「平和の為……ですか?」
胡散臭い言い文句に、俺は表情を曇らせる。
「そうそう。ほら、最近セカンドによる犯罪がよく報道されているでしょ? 同じセカンドとして、ああいうのって許せないわよね? だから今、正義感溢れる子供たちを集めて日本を救うスペシャルチームを作っているの。それがSGTよ」
「ええ、だから隊員を集めているんですよね?」
「もう知っているなら話が早いわ。それで今、君のお姉さんや不知火優華みたいに優秀な人材を集めている最中なの。だから君がSGTに入ってくれれば心強いわ」
俺をおだててSGTにスカウトしようとしているのは分かっているけど政治家、目上の人にこう言われては、悪い気がしない。
「そ、そうですか? 確かに俺、他人の能力をコピーする能力みたいですけど」
「凄いじゃない! その才能を埋もれさせちゃだめよ! 君みたいにヒーロー性の強い子は不知火さんみたいな広告塔、SGTの顔になって欲しいわ。テレビや雑誌の取材に慣れるのは大変かもしれないけど、明るいニュースで世間を安心させてあげましょう」
SGTの顔?
異能力集団に加入するだけじゃなくて、そこでリーダー的存在に……
目の前に広がる主人公ロード。
俺は足の裏がふわふわとして、今すぐ走りたい気分だった。
「そんな、俺はヒーローなんて柄じゃないですよ。それに警察や軍隊みたいな泥臭い仕事、俺って運動部でもないし」
「それなら大丈夫。確かにSGT隊員が通う学校は体育の授業が多めだけど、セカンドの強みはあくまで超能力。汗臭い事よりも能力開発がメインだもの」
俺は完全にニヤけながら、照れ隠しに頭をかく。
「いやぁ、でもぉ……」
「あ、それとお給料だけど」
「え? 給料が出るんですか?」
「国家の為に働くんだから当然じゃない」
なるほど、高校生のアルバイトみたいなものか。でも国はケチだから時給は安そうだな。
「ちなみに月収はこんなものかしら」
え? 時給じゃないの?
女性議員はふところからスマホを取り出して操作。俺に計算機モードの画面を見せた。
その金額を見て、俺は唾を吞みこむ。
特別高給取りではないけど、どう考えても高校生のバイトで稼げる金額じゃない。まるで優良企業のマトモな月収じゃないか。
俺はキメ顔で、
「社会正義と平和のために、この身を捧げます!」
と宣言した。
姉ちゃんがジト目になる。
「弟ちゃん……何か下心があるんじゃない?」
「やだな姉ちゃん。もっと弟を信じろよっ。そういう姉ちゃんだって俺に黙ってSATなんて危険な仕事に就いていたじゃないか。姉ちゃんは下心でSATに入ったのか?」
「合法的に銃が撃てるという下心で入りました!」ぐっ
「握り拳を作って言うな!」
結局俺らは、姉弟そろってキングオブ庶民だった。
まっ、人間なんてそんなものなのさ。
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