第21話 グリズリーとホッキョクグマのハーフ、ピズリー


 一撃一殺。華麗な足技だけで、ポニテ女子はいともかんたんに八体の肉食獣を倒してしまった。


 熊の動体視力は、テレビをワンフレームレベルで視認できるほどだ。五感を獣化させた俺の瞳には、ポニテ女子の優美で力強い美技の数々が鮮烈に映し出された。


 そしてこれほどの活躍をしながら、ポニテ女子の闘志はまだ治まらなかった。むしろ、やっとエンジンがかかったと言わんばかりだ。


 当然だ。何せシマウマは、もっとも凶暴な草食動物の一頭で、中型肉食獣よりも確実に強い、超危険猛獣なのだから。


 シマウマが哀れな弱者、というのはメディアが作りだしたフィクション。そもそもサラブレッド並に足が速いシマウマが競走馬になれない理由は、凶暴過ぎて騎手が危ないからだ。また、遊びで他の動物を蹴り殺し、中型肉食動物を追いかけまわし、ライオンを蹴りの一発で追い払うことも珍しくない。


 とある自然公園ではチーターとシマウマを同じ区域で飼育し、チーターをシマウマから守るための避難所が設けられているほどだ。


 当たり所が悪ければライオンも一撃で蹴り殺せるシマウマのキック力と闘争心。それはピューマやリカオン程度がどうこうできる相手ではないのだ。


「あんたらも、やる?」


 底なしの闘争心は、ついにレオポンとジャグリオンにまで向いた。ポニテ女子は立ち上がり、獣王ふたりと対峙する。そこへ、最初に倒されたピューマ女子が乱入した。


 ピューマ女子はポニテ女子の下半身にしがみつき、引き倒そうとする。戦略も何もない、ただの悪あがきだ。ポニテ女子のミニスカートがめくれあがり、俺の位置からだと白黒ストライプ模様のヒモパンが丸出しになる。シマウマの獣人だからって、どんだけストライプ好きなんだよ。


 思わぬラッキースケベに、俺はちょっと興奮してしまうが、顔には出さないよう務めた。


ピューマ女子がポニテ女子のミニスカートとヒモパンに喰い下がる。するとポニテ女子は力を込め、掛け声と同時に跳躍。ピューマ女子ごと一回転すると、お尻から床に落ちた。


「ゼブラ・ヒップ!」


 ポニテ女子の、爆乳以上に目立つ大きなお尻が、ピューマ女子の顔面を下敷きにする。頭蓋骨を床に叩きつける鈍い音がした。ピューマ女子の右手が、ポニテ女子のミニスカートから離れる。それを確認すると、ポニテ女子は立ちあがった。


 ピューマ女子の左手には、ヒモのほどけたストライプヒモパンが握られていた。


 ちょっ! えぇえええええええええええええええええええええ!


 ポニテ女子は俺らに背を向けて、森中と雨流に何か言っている。でも、その言葉は俺の耳には届かない。


 ポニテ女子の、XLサイズのヒップを包む、申し訳程度のミニスカート。ヒモパンが床にその身を横たえているということは、あのスカートのなかは、スカートのなかは……


 俺の頭のなかで、思春期が爆発する。ただでさえ今朝は、三姫のダイナマイト、いや、ボルケーノボディを見てしまい、感性が鋭敏化されている。なのに、こんなにも想像力をかきたてる妄想ネタを転がされては、流石に冷静ではいられなかった。


 いきなり不良に絡まれて、三姫が告られて、女子たちが失禁して、長身美少女がミニスカートで戦って、いまはノーパンで、駄目だ。淫らなことしか考えられなくなってきた。


「それは僕の本位じゃないな。帰ろうかジャグリオン。こんなところでこれ以上争うのは、賢くないだろ?」

「チッ、わかったよ」


 え!? 何がどうわかったの!? 本位じゃないって、あのポニテ女子なにを言ったの!? どうしようエロい妄想していて大事な話を聞き逃した!


「おいテメェら、帰るぞ」


 流石に獣化しているだけあって、倒れていた女子たちは呻きながらも、何とか立ち上がる。ただ、後ろ蹴りとヒップアタックを喰らったピューマ女子だけは意識を失ったままで、他の女子に引きずられていった。


 最後に、雨流と森中が、


「おいそこのお前。テメェの顔は覚えた」


 覚えないで。


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