第20話 ネコ科軍団VS最強の馬シマウマ


 でもピューマ女子の願いは届かない。雨流が返事をする前に、とあるポニーテールの女子がピューマ女子の肩をつかんだ。


 ピューマ女子が振り向く。果たしてそれは、ここの客だった。


「ちょっとどうしてくれるのよ! ベリーハードモードクリアできそうだったのに!」


 ピューマ女子が叩いた筺体のプレイヤーだ。さっきから俺らの騒ぎにも拘わらず黙々とプレイしていたので、度胸あるなぁ、と思ってはいた。その彼女がピューマ女子に喰ってかかる。


 大きな瞳が魅力的な美少女で、背が高く、グラビアモデル顔負けの爆乳が目を引いた。


 ミニスカートに白黒ストライプのチューブトップという露出度の高い格好のせいで、スタイルの良さが際立っている。


「はぁっ? そんなの知らないわよ! いまこっちはそれどころじゃないのよ!」

「あんたの予定なんか知らないわよ! ていうかこんなところで獣化して迷惑なのよ! 喧嘩ならあたしが買ってやるからさっさと済ませて帰りなさい!」


 途端に、長身美少女のポニーテールが白と黒の縞模様になり、馬の耳と尻尾を振り乱し、靴を脱いだ足は蹄になっている。


 その姿を見て、ピューマ女子を含めた八人の女子が笑いだす。


「何それシマウマじゃない」

「あんたも帝和学園の生徒だったの?」

「エサがあたしらと喧嘩する気?」


 肉食動物を素材に持つ女子たちは、ついさっき失禁したことを忘れたように、痛快に笑っている。ひとしきり笑うと、ピューマ女子が眉を吊り上げた。


「外野は、ひっこんでなさい!」


 ポニテ女子の後ろ蹴りが、ピューマ女子のみぞおちを打ち抜いた。


 ピューマ女子は数メートルも吹っ飛んで、筺体と筺体の間の通り道に背中を打ちつける。


 残る七人の女子はあっけに取られて、視線をピューマ女子からポニテ女子に移す。


「次は?」


 ポニテ女子の声は、闘志に燃えていた。全身から香り立つ彼女の匂いに俺は惹かれた。はじめて三姫を目にしたときに近い感情が、再び俺の胸に湧き上がった。


「ナメんじゃないわよ!」


 残る七人の女子が次々襲い掛かる。


 ディンゴ女子が、前蹴りの一発で顎を打ち抜かれる。


 背後から襲いかかったボブキャット女子が、ローリングソバットで吹っ飛ばされた。


 ポニテ女子は着地と同時に天井高く跳躍し、空中胴回し回転蹴りでコヨーテ女子を叩きつぶし、続けてフライング・ニールキックでウンピョウ女子を蹴り伏せる。


 そこへ跳びかかって来たサーバルキャット女子の肝臓を三日月蹴りで蹴り抜いて、残ったジャッカル女子とリカオン女子を睨みつけた。


 怯えるふたりは、やぶれかぶれとばかりに突進。ポニテ女子はバック転の逆、大きく前転すると、足を縮め、逆立ち状態から一気に足を伸ばす。


「ゼブラ・ブロウ!」


 二本の足は、ジャッカル女子の顔面を打ち抜いてから開脚。リカオン女子の顔面を股に挟みこんだ。ポニテ女子は流れるように、勢いよく逆エビ反りにバック宙。リカオン女子を前転させ、後頭部を床へ叩きつけた。フランケン・シュタイナー。プロレスの大技だ。


 リカオン女子の顔面に騎乗したまま、ポニテ女子は天井に拳を突き上げた。


「アーイム! ウィナァーー!」


 一撃一殺。華麗な足技だけで、ポニテ女子はいともかんたんに八体の肉食獣を倒してしまった。

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