第16話 攻撃力は、からっきし
「よし、今はここまでにしておこう。それよりもやるべきことがあるんだから」
ミエルは秘密の通路の存在を確認するだけに留めておいた。今はまだあの部屋に
「だけどせっかく忍び込めたんだ、お駄賃代わりにお茶のひと掴みでももらっちゃおうかな」
ミエルは
不穏な空気のその方向に視線を向けるが早いか、目の前を手刀の突きが掠めた。ミエルは反射的に半歩後方に退く。同時に間合いを取って相手の姿を確認する。するとそこではお団子ヘアがトレードマークのメイド、
互いに目が合った瞬間からミエルに構える隙を与えぬよう、
彼はこの仕事を始めるにあたって事務所のママから最低限の護身術は身に付けるように命令されていた。
「女の子だから顔は狙いたくないけど、そんなことは言ってられないよね」
ミエルは
「なんなんだ、この人。動きが全然読めないよ」
それもそのはず、ミエルが使う当身術が直線的な動きであるのに対して
それは時間にして五分も経っていなかっただろう、しかしミエルにはえらく長い時間に感じられた。ここまで
「ハァ、ハァ、ハァ、これってピンチかも」
そろそろ息が上がりつつあるミエルの視界に
思わず息が止まる。少しでも息をしようと口をパクパクしているミエルの顔面に今度は冷たい霧が降りかかった。それは
「
目の前で崩れ落ちるミエルにそう言うと
「仕事が終わるまで目を覚まさないようにスプレーを使ったよ。これで夜までぐっすりね」
「さすが、こっちの手際はお見事ね」
見事な殺陣を演じて見せた
「
「とりあえずロッカールームの物入に押し込んでおく。夜になって
「そうね、この子のバックに誰がついてるのかを押さえておかないと次の手が打てないしね」
「どんな組織だろうと面倒は避けるのが賢明。こいつを生かすも殺すもその後のことね」
拘束したミエルを二人がかりで倉庫からロッカールームに移動すると、使っていない物入に彼を放り込んだ。寝息を立てるミエルを見下ろしながら
「さて、そろそろ『おもてなし』の時間、邪魔者も片付いたし急ぎましょう」
「
こうして二人は互いにほくそ笑みながら何事もなかったかのように
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