第14話 男の娘探偵、ミッション開始
真っ赤なフレームのシティーサイクルを颯爽と走らせるメイド服にお団子ヘアの女性、彼女がルナティック・インでハーブのブレンドを担当する
明治通りを渡って文化センターの手前を曲がり、そのまま味気ない雑居ビルばかりの道を進めば店まではもう間もなくだ。
「
「お疲れさま、眉月!」
開店準備に忙しい
「ご苦労様です、
「そうそう、ハーブもスパイスも七人分ね」
「それではブレンドの方はよろしくお願いします」
「承知したよ」
開店前とは言えあまりにも迂闊だ。こんな小さな油断が大きなトラブルにつながることもあるのだ。
「
それでもなおルームの
「今日はすぐにやってもらうよ。とにかくカギ!」
彼女の剣幕に押された
「おはようございます、
元気よく声を上げながら扉を開けて入ってきたのは
「
かわいさを演じながらもしっかりと店の様子を見渡すミエルの視界に例の隠し扉が開いているが見えた。それとなく中に目を向けると
「月夜野がいる。お人好しの彼女に気付いてもらえれば無下に追い返されることもないよね」
そう考えたミエルはここぞとばかりに声を上げた。
「婦長様もおはようございます!」
「
「あ、えっ……あ――っ、私、やっちゃいましたぁ?」
ミエルは
「あらあら
これ見よがしに肩をすくめて見せるミエルにルームの中から
「
「
よし、ここまでは予定通りだ。ミエルは誰にも気付かれないよう、ひとりほくそ笑んだ。
片や慌てたのは
今、店には
それは一昨日の夜、英国風パブでミエルが
「お兄ちゃんがおかしくなったのは絶対にあの店に関係があるって思ってる。とにかくあたしはそれが何かを確かめて……」
「それで、晶子はどうするの?」
「警察に話して……」
「そんなの、証拠もなしに言ったって相手になんてしてもらえないわ」
晶子はあの店が出すハーブティーに秘密があると考えていた。それを確かめるためには何としてでも
やはりこのまま放っておくわけにいかない。晶子が暴走すれば自分のミッションにも影響が及ぶ。いや、今や自分も監視される身になっているのだ。こうなったら二人で共闘するのが得策かも知れない。
そう考えたミエルは晶子にそれを提案した。
「だから晶子と私であの店に忍び込んでそのハーブだかをゲットするのよ」
「そんなことできるわけないし」
「できる……ううん、やるのよ」
ミエルはあの隠し部屋を調べるために考えていた計画を晶子に説明した。
「まず私がシフトを間違えたふりをして店に出るわ。そうね、晶子も私も入ってなくて、でも
「ちょっと待ってよ。
「ふふ、これでも受験生だもん、記憶力が勝負なのよ」
ミエルはそう言ってマスターがサービスしてくれたコーヒーを一口、それを晶子にも飲むように勧めながら話を続けた。
「きっとその日はルームとか言ってるあの部屋にお客が来るんだと思う。だからまずは私が乗り込むわ。きっとビンゴよ」
「美絵留の言うことはわかるんだけど、でもあいつら絶対にゴミを出さないし。きっと店のどこかに隠して、あとからこっそり運び出してるんだと思うし」
「それを探すのは簡単じゃないわ、危険も伴うし。だから無理にとは言わない。どうする、晶子」
「もちろんやるし、ううん、絶対やる」
「わかったわ。それならもっと具体的に手順と役割を決めましょう」
こうして二人の作戦会議はまだまだ続くのだった。
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