第9話 監視対象は有明
その日のルナティック・インにはいつもとは違う張り詰めた空気が漂っていた。客のいない店内はBGMすらなく静まり返っている。それはまるで開店休業、これから訪れるであろう客すらも拒絶せんとする雰囲気だった。
メイドたちもまたしかり、バックヤードに籠りっきりの
「
学校の制服からメイド服に着替えて今日も新人メイドの
ミエルが
一方、
「ここはもういいよ、とりあえず裏庭の流しでモップを洗ってきて。それが終わったら次の仕事をお願いするから、よろしく」
ミエルもまたテーブルを拭きながら
店の裏手には小さな庭があり、そこに流しとゴミ箱がある。例の隠し部屋を探ることはできなかったが、
実はこれまでも彼女は店から出るゴミから証拠を得られないかと考えてそれを入手せんと試みていた。しかし結果はまったくの空振り、捨てられていたのはただの紙屑ばかりだった。
あれだけの紅茶を提供していながら茶葉がまったく捨てられていないのはなぜだろう。やはりこの店で出すお茶には知られたくない秘密があるに違いない。晶子の心の中で店への疑惑は募るばかりだった。
よし、今日こそ見つけてやろう。そう意気込んではみたものの、晶子が裏庭にやって来たとき既にそこには
そう、
やはりあの苗字だ、誰が見たってそれはわかる、晶子の正体は既にバレているに違いない。しかしそれは彼にとって
「
カウンターの中では表情ひとつ変えずにカップを磨く
テーブルを拭きながら三人のメイドを観察するミエルの耳に
「そうか今日はあの部屋に客を入れてるんだ。どうりで店がピリピリしてたわけだ。それで
ミエルは自分に疑いがかけられていないことに胸をなで下ろしつつも、しかし晶子の身が心配になるのだった。
もたもたといつまでもカウンターを拭いている
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