第37話 四天王VS勇者

 その時、ラムダは何故こんな時に勇者がと焦る。


 仮にも彼らは酒に酔っていたとはいえ先代魔王を討ち取った猛者。


 万が一にもバトラが討ち取られるような事になれば選挙に関係無く次期魔王はメル、そうなれば邪神復活計画は当然頓挫する。


 何としてもバトラを守らねば、そう思いバトラの私室へ行ったが彼の姿はなかった。


 今部下にもバトラの行方を捜させているが、先代魔王も手を焼いたドラ息子はどこで何をしているのやら。


「ホーリーロック!」

「テラブリザード!」


 突如廊下の曲がり角から現れた光のロープがラムダの手足を縛り、間髪いれず現れた魔法使いが放つ凍結呪文でラムダの首から下は氷漬けにされてしまう。


「こ、これはまさか!?」


 立て続けに、今度は勇者と剣士が姿を現し、ジャスティス・スラッシュと悪魔斬り・改をラムダの首目がけて放つ。


 その剣が放つ魔力と闘気にラムダの顔が青ざめ死を悟る。


 邪神復活計画どころではない、まさか自分がこんな所で死んでしまうのか、四天王筆頭で数年後にはこの大陸でナンバー二の地位にいるはずの自分が。


 絶望色に染め上げられたラムダに凶刃が迫り、


 ザシュッ ザシュッ


「やっぱりね」


 勇者と剣士の渾身の一撃はラムダに届かず、メルが両腕でそれぞれ受け止めていた。


 二人が剣を退くと、メルの両腕から血が滴り落ちる。


 問題無く指は動くが、傷口はそれなりに深いようだ。


「メ、メル様……何故……」


 ラムダの胴体に掌底(しょうてい)を打ち込むと、氷と光りのロープは粉雪のように砕け散り、メルはあらためて勇者達を鋭い目で射抜く。


「パパが殺された時、ラムダは近くにいたけどあんたらはすぐに逃げたんだったよね?

って言う事はあんたらは四天王筆頭、ラムダの顔を知っているはず。

魔王の娘が殺せないならせめて四天王筆頭だけでも、そう思ったんだろうけど」


 メルは拳を構え、力強い言葉で宣言する。


「ボクがいる限り! この国の国民はボクが守る! それが魔王の務めだ!!」


 その勇ましい姿に、勇者はおろか、四天王のラムダでさえ釘づけになってしまった。


「ぐっ、しかし相手は二人、四人がかりなら倒せ」

「スリープフィールド」


 勇者が言い切る前に、背後からアルムに睡眠呪文をかけられた勇者パーティーはその場にバタバタと倒れ伏した。


「ふぅ間に会った」

「ふむ、こやつら先程のダメージが直っておるな」

「どうせ回復アイテムか呪文だろ? これだから勇者パーティーと戦うのは嫌なんだ」


 オルファ達の後に兵士が駆けつけると、メルはその兵士へ勇者達をバルトリア王国領内へ放りだしておくよう言いつけ、アルムに腕の傷を治してもらうとラムダに「じゃあね」と言って、何事もなかったかのようにその場を去って行った。


 残されたラムダは一人立ちつくし、そして再び邪神復活計画について思案し始めた。



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