第36話 勇者ごときが魔王に勝てるわけがなかった

 四人が吹っ飛び、庭園の壁にめり込んだ。


 普通ならこれだけで即死だが、さすが勇者。


 四人はすぐに壁から這い出して戦闘態勢に入るも、四人は綺麗に同じ方向に飛ばされたわけではない。


 四人は互いに距離が空き過ぎていて、そして隊列を組む前にオルファ達に距離を詰められていた。


 一番強いと思われる勇者は最初、オルファが相手をしようとしたが、メルに肩をつかまれ止められる。


「オルファ、ここはボクの国で、ボクは未来の魔王だよ♪」

「……だな」ニヤ


 こうして最初に殴った相手と戦う事になり、勇者パーティーと魔王パーティーのバトルが始まった……と思うのだが、


「未だ若い未熟な魔王が、一対一なら勝てると思ったか!? 奥義、ジャスティス・スラッシュ!!」

 勇者の剣が金色に光り輝き、

「魔王☆武凛瀬凄万薙(プリンセスパンチ)♪(超大技)」

 メルの一撃で勇者は吐いた血で放物線を描きながら空の彼方に飛んでいく。



「喰らいな! 悪魔斬り・改!」

 剣士の闘気をまとった剣が振り下ろされ、

「アブソリュート・オーガナックル!(かなり大技)」

 レアの拳一発で剣士は庭園の壁を突き破り、そのままどこかに飛んで行く。



「さぁ見るのですワタシの華麗な呪文を、テラフレイム!」

 杖から噴き上がる巨大な炎がアルムに迫り、

「ギガ・バーストフレア!(結構強い呪文)」

 アルムの超極太の熱線が魔法使いを飲み込み姿が見えなくなる。



「これぞ神のご加護! ホーリーストライク!」

 杖の先から眩い光の巨大な球が尾を引いて放たれ、

「神神神神ってうるせぇんだよっ!!!!!(ブチ切れパンチ)」

 オルファの一撃で光速でカッ飛び、僧侶は城の壁を貫通して行った。



 どれも熟練騎士でさえ木端微塵に消し飛びかねない、だが勇者達はちゃんと人型の原型をとどめたまま飛んでいったのは流石と言える。


 だが問題なのは、


「……あれ? 勇者さん達は?」


 アルムが小首を傾げる。


 勇者と魔王の戦いなのだから、当然すぐにまた向かって来ると思っていたのだが、いつまで待っても勇者達は来ない。


 それどころかオルファが城の中に入って瓦礫を漁るが僧侶の姿は見つけられなかった。


「どこかに隠れているのか?」


 城の中から戻って来たオルファが皆に意見を求めた。


「ふぅむ、まぁその可能性が無くはないが、我らの隙を突く気か?」

「まさかオルオル、みんな殺しちゃったとか?」

「で、でもあの手ごたえだとまだみんな生きてるはずだよ、わたしも呪文の威力抑えたし」


「ってことは……」


 四人の顔に影が差す。


「「「「逃げた?」」」」


 穏健派のオルファ達としてはそちらのほうが都合が良いが、勇者の行動とは思えなかった。


「いや、でももしかしたら」


 メルが何かに思い当たり、顔を上げた。




 

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