第33話 3票目ゲット


 レオンとの戦いを終えた次の日、朝食を終えたオルファ達がまた作戦会議をするためにメルの私室へと行くと、ドアの前には腰に剣を挿した王国最強の騎士が立っていた。


「おはようございますメル様、そしてオルファ様」


 歩みより、レオンはオルファに一礼する。


「オルファ様、私は私が愛したアリシアの為、アリシアの夢を果たします」


 そう言ったレオンの顔は作られたものではなく、自然な、優しい笑みだった。


「おう、これから頼むぞレオン」







「それでさ、確かオルオル前にイーナは簡単とかなんとか言ってたよね?」


 オルファ達四人とタウ、レオン、計六人がイスに座る中、オルファは頷く。


「ああ、あいつは損得で動くから簡単だぞ」


「でもオルファくん、今は二対二だから確かにイーナさんがこっちに加わってくれれば三票入るけど、邪神が復活して大陸制覇よりも魅力的な条件なんてどうやって提示するの?」


「確かにこの城のメイドを六割攻略した我でもあの女を攻略する事は至難の業(わざ)だな」


「心配するなよアルム、まぁ見てなって(ついに半分越えたか……)」






 廊下にて、


「おいイーナ」

「なんですかオルファ様?」

「お前三日後の選挙の時メルに投票してくれよ」


「はっ、何を言い出すかと思えば、私はバトラ様とともに大陸を制覇するのよ、何が悲しくて何の得も無い穏健派のメル様に?」


「タウとレオンはこっちについたぞ」


 親指で背後を差すとそこにはメルの左右に立つタウとレオンの姿。


「で、でもまだ二対二じゃない、選挙が延長すれば」


「お前さ、本当に邪神が恩義感じてバトラの言う事を聞くと思ってるわけ? バトラが自身たっぷりに言うからなんか考えてるんだろうとか都合のいい解釈してないか?

 言っとくけどあいつ邪神を操るアイテムとか持ってねえぞ」


「え……あ……」


「ていうかよ、二対二だからこそお前が裏切って三対一になれば確実にお前は勝ち組に行けるんだぞ、それにメルの味方すれば新政権でお前の地位は安泰。

 確実に今の地位を死守するのと、本当に自分達の言う事聞いてくれるかわからない邪神に賭けて、邪神が魔族も含めてまた大陸滅ぼしたら今の生活も失うんだぞ、お前お金大好きなくせにギャンブルするのか?」


「…………でも、邪神様だって……ねぇ」


 オルファは笑顔で握り拳を作る。


「言っとくけど、もし邪神を操れたとしても俺とアルムとレアが四天王連れてメルと一緒に邪神倒すから。

 昔四人の魔王に倒された邪神だけど、実質魔王四人と四天王一二人分の戦力に勝てるとでも?」


 イーナはオルファにヒザをつき、


「このイーナ、メル様の忠実なる僕(しもべ)でございます」


 こうしてメル達は三票集めたのだった。





「いやー、これで三日後の選挙はメルの勝ち、俺らの勝利確定だな」

「よかった、これで魔族と人間が戦争しなくて済むよね」

「流石は我の嫁、今回は素晴らしい活躍だったぞ」

「オルオルもそうだけど、やっぱりみんなのおかげだよ、ありがと♪」


 四人が満足げにメルの部屋へ向かって廊下を歩き、その後ろから四天王のタウも嬉しそうにその様子を眺める。


 元からタウは穏健派で戦争には反対だったのだ。


 自分の夢が叶い、彼女にとってはこれ以上ないほど幸せな展開であった。


「あ、メル様、じゃあわたしは仕事があるので」

「うん、じゃあタウちゃんも当日はよろしくね♪」

「ハイ♪」

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