第31話 東の魔王VS北の魔王 激闘
城から遠く彼方にあり、半径数百キロ圏内に誰も済まぬ果ての地。
凍てつく草原に二人の魔王が立つ。
かたや白銀の鎧と魔剣で武装した銀髪の美しき女魔王。
かたや漆黒の鎧と魔剣で武装した黒髪の勇ましき魔王。
人間相手には禁忌の完全武装で対峙し、そして何の合図も無しに二人は激突した。
一瞬で草原はクレーターと化し、クレーター周辺にいたアイスドラゴンや上空を飛ぶホワイトスカイドラゴン、そして凍る海の底に潜む数々の伝説級の魔獣達が死に物狂いで逃走した。
人外の戦いは僅か五分で第二ラウンドへ、互いの体から魔力の光りが湧きあがり、全身を光りに呑み込まれてしまう。
衝撃波を放ちながらドラゴンよりなお巨大に膨れ上がった光は形を成して金属質へと変化する。
衝撃波が巻き上げた粉塵の中から二体の巨人が姿を現す。
かたや刃を何枚も合わせたような翼と四本の腕を持った白銀の戦女神。
かたやコウモリのような漆黒の翼と二本のツノを持った漆黒の大悪魔。
両者の全ての手には巨体に見合ったサイズの大剣が握られている。
そして天を衝くような巨人の中から、この巨体を操りオルファとレアは衝突する。
数百トン級の超重量物質は、だが先ほどよりもさらに速い神速を以って戦い、周囲への衝撃波に大気が悲鳴を上げて、度し難い破壊の連鎖に大地が絶叫する。
無限に続く雪原に無数のクレーターを作り、大地を薙ぎ倒し世界を歪めて二体の巨人は獣の咆哮を上げて喰らい合う。
その光景はまさに神話の再現、巨大な女神と悪魔が互いを滅ぼそうと肉迫しているようにも見える。
二人の剣が万度目のぶつかり合いで砕け、まだ剣は残っているが二体の巨人は光となり消滅、核たる魔王の体へと収束していく。
第二形態の巨大な力を凝縮し一点集中させ、小さな武装に変える。
オルファとレアの視線が交わる。
レアは背後に後光のように円環状に浮かぶ一六本の剣を背負い、神々しさと禍々しさが入り混じり、白銀の輝きは損なわないがどこか堕天使めいた印象を受ける鎧と剣で武装。
オルファは漆黒のボディに金色の紋様が入った禍々しくも勇壮な甲冑に身を包み、同じく柄から刀身まで漆黒に染まりつつも金色の細工が成された剣で武装。
これが第三形態、魔王の最終形態である。
眼下に今までで最大のクレーターが広がるが二人の姿は無い。
今のは二人が天高く飛翔した瞬間のインパクトでできたクレーターだ。
地上一二キロメートル、成層圏で気温零下にしてドラゴンも飛ばぬ世界の果てだ。
音速の数百倍で剣を狂わせ、その速度と魔力からくる威力はこの高度で戦ってもなお地上に振動が伝わる程だ。
「炎属性極大呪文(プロミネンス)!」
「氷属性極大呪文(アイスエイジ)!」
オルファの超高温とレアの超低温が混ざり合い対消滅、だが地上で放っていれば確実に生態系に支障をきたしたことだろう。
地上に被害が及ばぬよう、上昇しながら殺し合う二人は成層圏を抜け、マイナス九〇度の中間圏、太陽からの電磁波を吸収し二千度の高温空間である熱圏を抜け、大気圏を突破して宇宙の闇夜を頭上にようやく本気を出す。
魔力をふんだんにつかった攻撃呪文や剣に魔力を乗せての魔法剣攻撃はもはや人類の常識を越えて天上の神々の領域に至り、未来において人類が手にする悪魔の兵器、核爆弾以上のエネルギーをけん制、ほんのジャブ感覚で連発する。
仮にこの二人が地球で戦ったなら、剣の一撃で島が消し飛び、魔力を使用した呪文や攻撃技の一発で大陸を削り取り世界地図を修正する必要があるだろう。
そして初めて放たれる魔王だけに許された究極奥義。
「「天地終焉す最期の刻(ハルマゲドン)!!」」
距離を取った二人を包む全身の光りが爆発、破滅の光りが束となって互いに向かって放たれる。
地上でこんなものを使えば、場合によっては地球の地軸が変わる可能性すらある。
故にこの技を禁忌として使用を封じるのは魔王全員が本能的に知る絶対の掟。
使用は同じ魔王同士の決闘か天上の神々、地獄の悪魔王を相手にし、人間界では宇宙空間でのみ許可される。
二人の禁忌が激突した瞬間、地球からもその輝きは肉眼で観測できた。
その日その時、ファルガス大陸を含め、地球上に住まう全大陸全島の、全世界の魔族が本能的に同じ方角を仰ぎ見て、人間ですら魔術師や感の鋭い者は反射的に空を見上げた。
触れるモノ全てを問答無用で原子レベルで滅ぼす破滅の光りを放ちながら二人の魔王は接近。
全身から放つ光をそのままに、互いの体が剣の射程に入る直前、滅びの光りを一瞬で全て剣に乗せて二人は振るう。
「「アポカリプスッ!!」」
魔王最後の一撃が、宇宙の闇を斬り裂いた。
「「――――カリバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」
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