第29話 4票中、残るは2票


「それ凄いよオルオル! あのレオンをこっちに引き込んじゃうなんて!」


 その夜、オルファ達は報告と作戦会議を兼ねてメルの部屋でくつろいでいた。


 もちろん、手にはジュースの入ったグラスが握られている。


「まだ決まったわけじゃないけど、でもあの感じならきっとメルに投票してくれるよ」

「オルファくん凄い」

「さすが我の嫁だ! 我がこの城のメイドの四割を攻略する間によくぞやった」


 アルムとレアが左右から抱き突いて来て、オルファは嬉しそうに笑う。


「ってレア! お前今なんて言った!?」

「よーし、じゃあ今日は久しぶりに飲んじゃうぞー♪」

「また無視するのかメル!?」


 言って、メルは部屋のプールの中に両手を突っ込むと、水の中から酒瓶を四本引き揚げた。


「そんなとこに隠してんのかよ」


「隠してるわけじゃないんだけどね、ただこのお酒は空気に触れないよう水の中で保存してたほうがいいってだけ♪

 ボクは普段はお酒飲まないんだけど、みんなは飲むんでしょ?」


「いや、わたしは」

「我は毎日ラッパ飲みだぞ」

「うわぁ、さすが氷の女王」


 オルファがため息をつくが、レアは嬉々としてメルから酒瓶を受け取りグラスに注ぎ始めた。





「いやー、たのしかったねー♪」


 深夜、酒に酔って寝てしまったオルファとアルムをベッドへ運び、メルとレアはまだ部屋で飲んでいた。


 バルコニーで冷たい夜風に吹かれながら月を見上げ、二人はまた乾杯をする。


「でも意外だったなー」

「何がだ?」


「この状況全部だよ、だって魔王って言ったら魔族の国最強の存在で最大の権力を持った王様だよ?

 そんなのが全員一つの国に集まって、そんでボクの味方してくれるなんて、こんな事滅多にあるもんじゃないよ♪」


「ふふ、そうだな」


 レアも楽しそうに笑って酒を飲む。


「でも失礼ながら、レアレアには特に驚いてるよ」

「我にか?」

「うん、だって噂だとレアレアってもっと怖くて冷たいヒトかと思ったら……えいっ」


 横目でチラリと見てからグラスを置き、メルはレアの胸に飛び込んだ。


「あったかーい、やわらかーい、きもちぃー、レアレアさいこー♪」


 胸の谷間に顔をうずめたまま、両手で思う存分その胸を揉みしだく。


「ふはは、お主も我の魅力にメロメロか、メルならいつでも嫁に歓迎するぞ」


 上機嫌にメルの頭を撫でまわしてから、レアもメルを抱き締める。


「だがなメル、我もつい数ヶ月前までは過激派だったのだぞ」

「そうなの!?」


 意外そうな顔で驚くメルに、レアは肯定する。


「ああ、でもな、あいつらを、オルファとメルに私は動かされてしまったのだよ」


 ワインを転がしながらグラスを天に掲げてレアはグラス越しに月夜を見つめ、そして語った。

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