第27話 魔王VS四天王 決着


「見られるかどうかじゃない! 彼女がいたとして喜ぶかどうかの」

「だからそれが綺麗事だって言っているんですよ!! フザケないでください!!」


 一度吐き出した言葉は止まらず、レオンは剣を振りながら言葉の熱量は増すばかりだった。


「彼女が喜ぶ喜ばないなんて関係無い!! 人間との共存を望む彼女がなんで死なないといけなかったんですか!?

あんな連中に彼女を殺す権利がどこにあったっていうんですか!?」


 そして泣き叫ぶ。



「私から彼女を奪った連中と何故仲良くできますかっ!!!?」



 熱い涙を流し、レオンは全てを吐きだす。


「どんなに人間を愛した彼女を思い出しても! どんなに彼女が喜ばないと自分に言い聞かせても! 私の魂が人間を拒絶するんです!!」


 それがレオンの本音だった。


 こうなってはオルファの作戦は通じない。


 レオンはもう理屈で考えていない。


 感情的とも少し違う。


 これは妄執だ。


 人間に対する憎しみが強過ぎて、その憎しみだけで動いているのだ。


 こういった人間には理論なんて聞かない。


 レオンにとって、死んだ彼女が今の自分を見てどう思うかなんて関係なかった。


 本当に、どこまでもただ純粋に彼女を失った悲しみと人間への怒りからくる殺人衝動を冷静な仮面の中に押し込め、一〇〇年もの間生きて来たのだ。


 レオンの心は折れない。


 レオンを心変わりさせるのは不可能だ。


「(なら方法は一つ!)」

 

 レオンには人間を憎んだままメルを支持してもらう。


「そうかい! てめぇの言いたい事はよーく分かったぜレオン! でもな、だからってこっちも退けないんだよ!!」


 オルファは第二形態にはならず、魔術も使わず、魔力はレオン同様肉体強化にのみ使うが、その魔力量を限界まで高める。


 東の魔王、オルファ・イスタンスはその総魔力をおしみなく全身に溢れさせて、さらにスピードに特化して強化する。


 最高の剣技を持つレオンにパワーは相性が悪い。


 ならばレオンの動体視力を上回るようなスピードで、

レオンの刃が追いつかないほどの瞬発力で、

技術が効果を発揮する前に斬り終わってしまっているような速力を実現しようと、オルファは最強の騎士に肉迫する。


 戦いのボルテージは限界まで上がり、二人は血をまき散らし、木々を滅ぼしながらどこまでも殺し合う。


「ぐぅ、まさかこれほどとは……ッ、貴方は……何故そこまで人類に肩入れするのですか!?

 貴方の国とて人間達に攻め込まれ少なからず魔族の犠牲者が出ている筈!

 魔族の王でありながら、国民に仇なす存在を何故守ろうとするのですか!?」


 それは至極当然の疑問だった。


 メルは国民の笑顔を守るために戦争を避けようとしている。


 もしかするとオルファも同じなのかもしれないが、普通に考えれば人間には弁護の余地が無く、オルファ、アルム、レアが、魔王がわざわざ出向きメルに助力してまで人間を守ろうとするのは奇妙過ぎる。


 だが、オルファは決して折れない闘士に目を光らせ、強い意志の元に叫ぶ。


「どうしても叶えてやりたい夢がある! ただそれだけだ!!」

「!?」


 オルファが自身の左腕をレオンの剣の切っ先に突き刺した。


 腕を貫通した剣は下腕を支える二本の骨、橈骨(とうこつ)と尺(骨(しゃっこつ)の間に捉えられ、自由を奪われる。

 そして、


「がっ!?」


 オルファの右手に握られた魔剣が、レオンを左肩から右わき腹にかけて袈裟斬りにした。


「…………アリ……シア」

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