第26話 魔王VS四天王 闘争
全てはオルファの仕込みである。
オルファの体には見る見る傷が増えて行くがオルファは何も手を打たず、そのまま剣で戦い続ける。
だがこれでいい、こうでなくてはいけないのだ。
レオンのようなタイプの人間に話を聞かせるには、説得するには剣に訴えるのがいいのだ。
一見すると策に見えないだろう。
だがこれがオルファの策なのだ。
オルファは論理的かつ感情的な思考を以ってレオンという魔族の特性からこの答えを導き出した。
レオンのように、信念を持ち冷静沈着な人物には千の言葉を並べて論破しようとしても無駄だ。
人間に恋人を殺された過去があるのならば、レオンは固まりきった価値観を絶対のものとして、冷静な頭で冷静に相手の言葉に耳を傾けず、やはり冷静に言い返してくるだけだろう。
だからこそオルファにはレオンに感情を剥き出しにして貰う必要がある。
冷静さをかなぐり捨てて、剥き出しの感情の全てをぶつけてもらい、その上でさらにこちら不利な状況で逆転しレオンを打ち倒すのだ。
説得というのは目上の人間からすると効果が薄まるものだ。
仮にオルファが第二形態となりレオンを倒したところでレオンは『やはり魔王は強い』と思ったり『この身が朽ち果てようと私の信念だけは壊れぬ』と反発するだろう。
故に、レオンの心を折るには、対等な、もしくは格下の立場から逆転し倒す必要がある。
魔王としての強大過ぎる力にでは無く、オルファ・イスタンス個人の信念に負けたというシチュエーションが必要なのだ。
「お前の恋人は魔族と人間が仲良くする事を望んでいたはずだ! こんな事をしても彼女は喜ばない!」
「くぅ…………!」
レオンの剣が感情的になり始めた。
顔を僅かに歪め、はっきりとした言葉で返さない。
レオンも悩んでいるのだろう。
魔族と人間の共存を望んだ彼女の死が原因でレオンが人類を滅ぼそうとするなど、きっと彼女は望まないだろうと。
「レオン! お前は間違ってるんだよ! 彼女の事が好きなら、本当に彼女の事を思うならむしろ人間との共存に力を尽くすべきじゃないのか!?」
「黙りなさい!」
顔を大きく歪め、大振りの一撃が木々を切り裂いた。
バックステップでかわしたオルファがさらに攻め立てる。
「彼女を殺されて人を恨む気持ちは分かる! だけど彼女はそんな事を望んでいない、愛するお前が人間を滅ぼす事を目論んでいるなんて知ったらきっと彼女は悲しむ!!」
こうしてさらに感情を引き出し、逆転すれば、
「そんなのとっくに分かってるんですよ!!」
レオンとは思えないほど顔を怒りに歪め、怒りと憎しみのこもった声で吠える。
彼の部下が見たらさぞ驚くだろう。
だがこれでいい、ヒトは決して人形では無い。
どんな人間にも必ず感情がある。
その正直な感情を剥き出しにした時、ヒトは心の壁をとっぱらったも同じになる。
心の門を開いた今、レオンという一人の魔族の内側全てがさらけ出されるのだ、だがレオンの叫びに、オルファは歯を食いしばることになる。
「彼女が人間との共存を望んでいた事! 私がこんな事をしても彼女は喜んでくれない事!
でもね、彼女はもう私がどれほど人間を殺しても泣いてもくれないんですよ!!」
血を吐きださんばかりにレオンは自らの本音を吐露する。
「ヒトは死んだヒトの事を引き合いに出してあの人が悲しんでいるとよく言いますがそんなの綺麗事じゃないですか!!
死んだヒトの泣いた顔を見れますか!? 死んだヒトの笑った顔が見れますか!?
彼女はもう死んでしまったんです! 笑う事も泣く事もできなければ悪口も言えないし喧嘩もできない!!
私が人間を殺す事で彼女の顔が見られるならどれ程幸せか……でもそんな事は起きない! 起きないようにしたのは誰ですか!? 奴ら人間じゃないですか!?」
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