第21話 まずは1票ゲット

「これでタウちゃんの一票ゲットだね♪ じゃあ次は誰にしよっか?」


 いつものメルの私室での作戦会議に今はもう一人、小柄なタウがちょこんと座って会議の様子を見守る。


「まずイーナは後回しだな」

「それは何故だ?」

「おいメル、確かイーナは金好きで損得勘定で動くって言ってたよな?」


 オルファの問いにメルは頷く。


「うん、正直イーナは戦争や邪神とかどうでもいいんだよ、邪神復活を賛成するのは人間の土地手に入れた方が貴金属やお金がいっぱい手に入るから、バトラについているのは四天王の中でも実力者のラムダとレオンがバトラについてて、自分も次期魔王の可能性が高いバトラについてたほうが甘い汁吸えるからとかそんな感じ」


「こういう感情じゃなくて損得で動く人間は扱いやすいんだ、だから課題はラムダとレオン、この二人のどちらを引き込むかだ」


「選挙で勝つのに必要な票は三票、タウちゃんとイーナさん入れても二票だもんね」


 メルの言葉にオルファは続く。


「二対二になったら次の選挙は半年後、そうなったら邪神は復活して大陸は終わりだ」

「だがこの二人を引き込むのは生半(なまなか)な事では無いぞ」

「どういう事だ?」

「うむ、我が攻略したこの城の二割のメイド達の話だと」

「へいストップ、お前今攻略ってそれはどういう意味だ?」


 真顔のオルファにレアは唇を一舐めして、


「この城のメイドは実にいい乳と尻であったぞ」

「メル! こいつ放っといていいのか!?」

「無理矢理じゃなかったらいいよ♪」

「いいのかよ!?」

「それでそのメイド達から仕入れた情報なんだが」

「(俺、無視された……)」

「ラムダとレオンだけは魔族としての確固たる意志を以って邪神復活と人類滅亡を企てているらしい。


 ラムダはいつも人間をサルだ害獣だヒト族では無く家畜にも劣る虫と言い、レオンは人間を正当な理由なく魔族を迫害する鬼畜外道のクズで頭の狂った連中と言っているらしい」


「そうそう、あの二人の過激な思想にはボクも手を焼いてるんだよねぇ、特にラムダは実家が代々四天王筆頭務めてるからプライド高くて」


 またメルがジュースを飲む。


 酒ではなくジュースしか飲まない、お子様設計の舌である。


「そういう奴は基本的に思想を曲げるのは不可能って言っていいんだよなー」

「そうなんですか?」


 オルファの決めつけたようにも聞こえる発言にタウが初めて問いを口にした。


「ああ、そう言うのは価値観の問題なんだよ、それで価値観ていうのはほぼ絶対的な物だ、そのヒトが人生経験ていう一番強烈な刺激から長年積み上げてきたもので言ってみりゃそのヒトの世界だ。

 ヒトは自分の価値観、自分の世界が全てでこの世の全てを自分の世界の基準でしか測れない。

 って言ってもどのヒトの世界にもだいたい共通した部分がある。

 これが一般常識って奴だけどどのヒトにしてもそのヒトからすれば自分の世界が常識だ。

 だから自分の世界を絶対と信じて疑わないし、何よりも自分の価値観が間違っていたって認めるのは自分の世界の崩壊であり自分が今までしてきた事、歴史が全て間違いだった事にもなるから、ヒトは本能的に自分の間違いを認めようとしないんだ」


「じゃあ無理って事ですか?」

「そういうわけにもいかないからなぁ………………」


 オルファが黙ってしまう。


 まさしくオルファの価値観ではヒトの価値観はほぼ変えられないとなっているので、価値観を捻じ曲げる策を考えるのは難しい。


 だが、


「わたしは、ラムダさんよりレオンさんの方が可能性あると思うな」


 アルムの意見にオルファの視線が止まる。

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