第20話 水着回 終
「いやーたのしかったねー」
後片付けのさ中、イスに座って顔をトロけさせつつメルがジュースを一口。
その横でアルムとオルファが顔を紅潮させながら苦笑している。
しかし、
「あ、メル様、今回の大会も盛り上がりましたねー」
「メル様また来月司会お願いしますー」
「よぉメル嬢! 国一番の猟師の何賭けて来月はレインボーサーモン用意してやるぜ!」
「レアさーん、アルムさーん、今回は負けたけど次はあたし達も負けませんよー♪」
「ウェスター国の女の美しさは日進月歩なんですから♪」
「メル様、また一緒に遊びましょうね」
『それで』
「「「「「「「絶対魔王になってくださいねぇーー!!!」」」」」」」
「みんなありがとー♪ かならず魔王になるから楽しみにしててね♪」
あまりの人気ぶりにオルファとアルムは唖然としてしまう。
メルは、アルムのようにアイドルをしているわけではない。
だがこの人気ぶりはなんだろうか?
今回の大衆ビーチでの様子を見ればその答えは分かる。
果たして、ここまで身近なお姫様がいるだろうか?
ここまで民衆と一緒に同じ笑顔で笑う姫がいるだろうか?
本当に、メルはみんなが大好きだし、みんなもメルの事が大好きなのだ。
「ねえみんな」
振り返り、オルファ達に向かってメルは眩しい笑顔で両手をいっぱいに広げる。
「これがボクの守りたいものだよ♪」
浜辺の笑顔溢れる国民を背景に、世界一の魔王様がそこにいた。
「だから邪神復活も侵攻戦も起こさせない、ボクは今あるこの平和とみんなの笑顔を永遠にしたいんだ♪」
弾ける笑顔と真っ直ぐな本音に、オルファ達は思わず顔に笑みが湧きあがる。
この子の夢を実現してあげたい。
人間達との盟約とは関係無く、この国の魔王はメルが務めるべきだと確信できる。
そんな気持ちで胸がいっぱいになって、オルファ達はあらためてメルを魔王にしようと思った。
そして、その光景を見ていたのはオルファ達だけではなかった。
「オルファくん、タウちゃんの事だけど結局どうするの?」
「そういえばボク達まだ具体的に何をするか聞いていないよね?」
浜辺で遊んだ次の日、またメルの部屋で作戦会議をするオルファ達だが、疑問を口にするメルとアルムの横でレアが薄く笑う。
その笑みの意味を知っているオルファも笑みを浮かべる。
「いや、最初は色々考えていたんだけどな、メルのおかげでもう完了した」
答えをはぐらかすオルファの態度にアルムもメルも眉根を寄せる。
「もう完了って」
「ボク何かしたっけ?」
本人に自覚は無いらしいが、それでこそ真の王。
真の人徳者とは、計算では無く呼吸をするようにヒトを惹き付けるのだ。
その時、部屋のドアをノックする音がして、アルムが誰だろうかと空けると、
「あの……」
躊躇いがちにうつむいたまま部屋に足を踏み入れて、四天王のタウがメルと向き合った。
「メル様、わたし……」
言った。
「やっぱりバトラ様にはついて行けません」
四天王、まずは一人目、タウの引き入れ成功である。
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