第16話 魔王たちの海水浴 水着回


「白い雲、青い海、そして眩しい太陽! 海はいいねぇ!」

「水着ギャルの胸と尻とフトモモしか見てないお前にそう言われてもなぁ……」

「ヒトは自分に無いモノを求めるものなのさ!」


 涙を散らしながら訴える貧乳界代表のメル、その涙一粒一粒に乙女の儚い夢が詰まっている事だろう。


 あれから一日経って、何故かオルファ達は浜辺にいる。


 野郎共(美形除く)を脳内フィルターで消しさり、解放的な水着美女で溢れかえる光景にメルはよくないハッスルをしている。


「(果たしてこいつを魔王にしていいのだろうか?)」

「とにかく今日はオルファ達の歓迎会なんだから大人に必要な理性やタガを外してわっしょいしちゃおうよ♪」

「メル、理性は無くしちゃダメだろ?」

「何を言うオルファ、ヒトは誰しもベッド内戦争では獣だぞ」


 最低の説教をして現れたのは着替え終わったレアとアルムである。


 オルファは黒の海パン、メルは青いチューブトップのビキニ、そしてたった今到着したアルムの水着姿はと言うと、見た瞬間オルファは息を飲んだ。


 オレンジ色のホルターネック、ブラの肩ひもを背中まで回さず首の後ろで結んで上からブラを吊るすタイプで二等辺三角形で胸を支える事でバストをバランスの良い美しい形に見せる効果があり、メルと違って女性的な体をしているアルムの魅力を十二分に引き出していた。


「(すげ……)」

「えと、どうかなオルファくん?」


 可愛く赤面するアルムが上目づかいに見てきて、身長が高いオルファから見ると胸の谷間がはっきり見え過ぎて、視界にアルムの瞳と谷間を同時に収め心臓のドキドキが止まらない。


「す、凄くいいぞアルム、さすが俺の幼馴染だ」

「ほんと? 良かった♪」


 そして愛らしい笑顔の横で最終兵器が揺れる。


「我はどうだ?」

「~~~~~~~~~~ッッッッ!!!!????」


 視線を右へズラした瞬間、オルファの魂がぶっ飛んだ。


 この時、レアが着ていたのは白いティアドロップ型三角ブラにストリングハイレグパンツ(ハイレグのヒモパン)であった。


 露出度が非常に高い過激な水着だが、水着以上にレアのカラダが規格外過ぎる。


 両手を使っても溢れちょっとした動きにも対応し揺れ波打つバインバインの爆乳が今にもブラから零れそうで、その下はギュッとすぼまったウエスト、かと思えばまたグッと張り出す大きくも上に引き締まったヒップがパンティを弾き飛ばしそうだ。


 そして、ハイレグカットのパンティのせいでレアの程良くムチッとした色気あるフトモモとすっきりとした細い下腹の間、女性の最も隠すべきゾーン手前まで見えてしまっている。


 もう一度ブラを見れば、レアの胸が大き過ぎるせいで、布が申し訳程度の効果しか無く、バストがほとんど見えてしまっている。


 しかもレア自身が驚くほど色白で、水着も白いので、遠目に見れば全裸に見える。


 もはやセクシーという単語では表現できない、危険な色気、存在そのものがR指定と化した⑱禁パーソン。


 まさしく違う意味で魔王様だ。


「おやオルファ、何故前のめりなのだ?」


 誘うような怪しい笑みで問うレアに、オルファは鉄面皮のキメ顔で、


「イスタンス家の男子は代々海では二〇度前傾姿勢派なんだ」

「ほお、では我も見習って」


 どたぷんっ!


 レアが前傾姿勢になって、オルファの視界が白い二つの巨星で埋め尽くされた。


 ブラックホール並の吸引力を誇る谷間を前にオルファは、


「オルファよ、イスタンス家の男子は二〇度前傾姿勢派ではなかったのか?」

「間違った。イスタンス家の男子は古来より海では四五度前傾姿勢派だ」


 どんなラブビームも聞かない程、オルファの精神防御力は高いがこの鉄壁の盾を以ってしてもレアのメテオ・ストライクは防げなかった。


 と言うよりも実家のイスタンス城の戦力ではレアに対抗できるほどの防御力は付けられない。


 イスタンス城最強の巨星、四天王筆頭にしてオルファ親衛隊隊長のルヴィーですらレアのボディには及ばないのだ。


 むしろこんな反則染みたカラダに耐性がつくような奴はヒトの心を捨てた人形だとオルファは心の中で叫ぶ。


「オルファくん」


 恐ろしい程低い声でアルムが前傾姿勢のオルファを見下ろす。


 『殺』と書かれた背景を背負い、開き切った瞳孔でオルファを射抜き、口には自分の髪を数本噛んでいる。


 青い顔でオルファは聞く。


「あ、あのアルムお嬢様? なんでございましょうか?」


 アルムの右手が頭蓋骨を鷲掴(わしづか)みにしてヒビが走る。


 それでもオルファには激痛を苦しむ余裕などない、冷え切った肝は鼓動を止め、悲鳴を上げる脳味噌はどうやって生き伸びるかしか考えられない。


「言イ残スコトハ?」


 思考停止。

 オルファは本能だけで答える。


「いやあれですよ、別に俺はレアのたわわに実ったメロンを収穫したいとか考えてませんよ」


 ブチン!

 アルムの血管が切れてトドメの一言。


 ぷいっ「オルファくんなんかもう知らない!」


 オルファの頭の中で、奈落の底に落ちる映像が流れた。


「ま、待ってくれアルム! 俺は爆乳なんか!」

「そういう事は鼻血を止めてから言ってよね!!」


 遠ざかる背中に前傾姿勢のまま追いすがろうとして、背後からレアが抱き突いてくる。


「のぉおおおおおおおお!!」


 イスタンス家は一瞬で海では体育座り派になった。


「我が城では共に風呂に入った仲ではないか、何を恥ずかしがる?」

「うそ!? レアレアってオルオルとお風呂入ったの!?」

「こいつが無理矢理突入してきたんだよ、しかも裸のアルム連れてな!?」


 その後の事はオルファの生涯最大の恥辱として黒歴史認定モノで今思い出しても死にたくなってくる。


「とにかく一度離れてくれぇー!」


 オルファの魔剣がバーストモード突破である。

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