第14話 魔王無双


「なぁ~~ッッ!?」


 これ以上ないほどまぬけな顔で驚く将軍の前で、レアはたった一撃入れただけで退く。


 代わりにアルムが無言で一発の火球を放ち、ゴーレムの胸板に命中。


 途端に巻き起こる爆炎。


 周囲の草原が灰となり焦土の中に立つゴーレムは紅蓮の炎の中で成す術なく燃え盛る。


「何をしておるゴーレム、さっさと奴らを潰せ!」


 しばらくして炎が消えると、全身から煙を上げながらゴーレムは主の命令を聞こうとするが、全身からギチギチと音が鳴り、動きがぎこちない。


「ぐぅ、さすが魔族、テラフレイムを詠唱破棄とは、認めたくないが魔術はだけは一級」

「え? 今のただのファイアボールですけど?」

「へ?」


 アゴをはずしながら驚く将軍。


 呪文が同じでも威力は使用者の最大魔力によって変わる。


 つまり魔王であるアルムの使う最下級呪文(ファイアボール)は最上級呪文(テラフレイム)級の威力があるということだ。


 いわゆる『余のメラじゃ』である。


「ばばば馬鹿ぬぁああー!?」

「悪ぃ、終わらせるぜ」


 飄々(ひょうひょう)とした口調でオルファは右の拳に魔力を集めてから跳躍、動きの鈍いミスリルゴーレムに迫り空中で、


「おらよ!」


 単純に殴った。


 魔力で強化はしているが普通にブン殴って、それだけでミスリルゴーレムは胸から背中まで巨大な風穴が空いてしまう。


 巨体は一〇〇メートル以上も吹っ飛んで地面に落ちると、もうピクリとも動かなかった。


 将軍を含め残った人間の軍人全てのアゴがはずれた。


 なんというかもう、冗談の域だ。


 魔族が強いのは解っているけれど、しかしここまで強かっただろうか?


 ミスリルゴーレムはあらゆる呪文を弾き剣や槍や矢を跳ね返す無敵の存在だったはずなのだ。


 それこそ、魔族の兵士すら切り倒すバルトリア軍最強レベルの騎士でもまるで敵わない、そんな兵器だった。


 間違って壊れたりしたら予算がもったいないので試していないが、開発者の予定としては、かつて南の魔王ディーノを倒した勇者パーティーにも匹敵する戦力のつもりだったのだが……


「ま、まさかあいつらが噂の四天王!?」

「さすが四天王!」

「バケモノみたいな強さだ!」

「くそぉ! 退散だ!」


 尻尾を巻いて逃げる敵軍へオルファはぼそりと、


「四天王じゃなくて魔王なんだけどなー、まぁ過大評価してくれてたほうが抑止力になっていいけど、なんにせよこれでまずは計画の第一段階完了ってとこかな?」

「「計画?」」


 アルムとレアが聞き返して、オルファはニヤリと笑った。

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